1947年から49年生まれのいわゆる「団塊世代」の大量退職が2007年から始まる。その引退が社会に及ぼす影響が大きいとみられることから、2007年問題と呼ばれている。その数は800万〜1000万ともいわれ、「巨大な消費市場」として注目を集めてもいる。
当然、音楽の世界でも巨大市場としての団塊世代向け商品が登場している。
「団塊世代へ捧げる感涙のコンピレーション」という、いささかおおげさなキャッチコピーが帯に印刷されているこの2枚組もそうしたひとつで、団塊世代の若かりしころにヒットした歌を40曲収めている。
このての商品は東芝EMIだけで「ベスト・フォーク100」「歌う明星」などすでに8タイトルが出ており、同社はさらに9月には「フォーク歌年鑑」という4タイトルも準備している。
ほかの作品が比較的細分化されていることを考えるとこの2枚組はピントが甘いようにも思えるが、1枚目に歌謡曲、2枚目にフォークを集めて包括的な内容になっているのが特徴なのだという。
なるほど1枚目には橋幸夫と吉永小百合「いつでも夢を」、藤島恒夫「月の法善寺横町」小柳ルミ子「わたしの城下町」などを収め、2枚目ではジローズ「戦争を知らない子供たち」、赤い鳥「翼をください」、加藤和彦と北山修「あの素晴らしい愛をもう一度」など
が聴ける。
ちなみにいちばん古い歌は水原弘「黒い花びら」(59年)。新しいのはダウン・タウン・ブギウギ・バンド「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」(75年)。ブックレットに年表がついているので歌と社会の出来事とを照らし合わせることができる。
さて、僕は団塊世代ではないのでこのラインアップを見て個人的な感動を覚えることはないのだけれど、なんとバラエティーに富んだ楽曲群であるかと驚かされる。
また団塊世代ではないにもかかわらず、これらの曲のほとんどを僕は知っており、当時の歌の生命力には感嘆する。
フォークソングのいくつかは小中学校の音楽授業の副読本で知った。たとえば「翼をください」は合唱の教材になっていた。
当時より新しい存在であったフォークのほうが教育素材に採用されたことは興味深い。歌謡曲のほうが教育的によろしくない内容だったのかといえば、うん、確かに歌詞も伴奏も猥雑(わいざつ)でエネルギッシュで、比べればフォークのほうはせいれつな歌唱、伴奏で理想や夢をうたっている。
つまりは、この2面性こそが同時に団塊世代の特徴でもあるのかもしれないと、そんなことを考えてしまう2枚組だ。
(ENAK編集長)