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ノラ 当然の進化
リトル・ウィリーズは、2003年の米グラミー賞主要4部門を制した女性歌手、ノラ・ジョーンズが新しく組んだバンド。ピアノの弾き語りでしっとりとした風情もたたえていたデビュー作「ノラ・ジョーンズ」にひかれた読者は、ちょっぴりとまどうかもしれない。
ここで披露される音楽を強引にジャンル分けするならカントリーだ。実際、ウィリーズというバンド名はカントリー歌手の大御所ウィリー・ネルソンの名前から拝借したらしい。同時に性的な意味もあるらしいが。
音楽全体から吹いてくるカラッとした風にややウエットなノラの歌声が絡んで独特の世界を出現させる。デビュー当時のリンダ・ロンシュタットから小悪魔的な魅力を抜き取ったような感じだといってもいいだろうか。これから訪れる春のBGMには似合うかもしれない。
前述のように聴き手の中にはとまどう人もいるだろうが、個人的にはノラがこうした方向に進むことには大いに納得している。
04年に彼女が2作目「フィールズ・ライク・ホーム」を出したとき僕は産経新聞朝刊「試聴」欄(2月3日付)に、こう書いた。
《ノラの音楽はジャズとして考えるとのり代をもつ。彼女はその余白をジャズ以外の米国音楽で彩る。それはたとえばカントリー。あるいは彼女が敬愛するザ・バンドの方法論。「ホワット・アム・アイ・トゥ・ユー」という歌におけるギターの使い方が象徴的だ。その米国くささゆえにつかんだグラミー賞であり、好き嫌いが分かれるとしたらその点だろう》
要するに僕はノラのデビュー盤を聴いて、その非ジャズ的な響きにおおいにとまどったのだった。ジャズの老舗レーベルから出たことで先入観にどっぷりとひたっていたせいで、率直に音と向かい合えなかったのかもしれない。
そのとまどいを氷解させるヒントが含まれていたのが「フィールズ・ライク・ホーム」であり、グラミー賞での圧倒的な評価だった。すなわちノラの立ち位置はジャズよりもカントリー寄りなのだと。
演歌と比べるのは正しくないが、ともかくカントリーはきわめて米国的な音楽だと思う。そういう音楽がノラというキャラクターを通して世界にどれほど浸透していくかきわめて興味深い。(石井健)
今回聴いたCD
リトル・ウィリーズ
リトル・ウィリーズ
東芝EMI
TOCP-67910
2,500円(税込み)
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