衣装デザイナー 任田幾英に聞く
(1)舞台衣装はメッセージ
10月1日(日) 東京朝刊 by 田窪桜子
宝塚歌劇団に入団して40年。夢の舞台に欠かせない華やかな衣装を手がけてきた。これまで描いたデザイン画は約5万枚にのぼる
−−舞台衣装のデザインはどう進めていくのですか
任田幾英 まず脚本を読み、脚本家自身も気づかない脚本の奥に潜んでいるものを見つけ出すところから始まります。これは舞台装置も照明もスタッフはみな同じです。
−−読むポイントは?
任田 第一は、作品全体で何を主張したいか、を脚本家の意図を想像しながら突き詰めることです。次に登場人物のキャラクターを考え、時代背景や場所を検証し、デザインにとりかかります。
−−宝塚歌劇は物語の時代も場所も広範囲ですね
任田 日常からアンテナを張り資料もそろえておかないと、脚本を与えられてから探していたのでは間に合わないですよ。資料や素材に出くわしたらすぐ購入します。東京だと企業のショールームに意外と資料がそろっていますね。パリのカルティエラタンは大学の街で古本屋も多いので、昔の写真集などお宝の山。買った本を持ってそのまま郵便局に行って船便で送ったり、常に情報収集ですね。
−−最近の若いスタッフもやり方は同じですか?
任田 蓄積がない分、みな走り回っていますよ。ただ、最近はパソコンですぐに資料を探せるので、われわれの時代に比べたらずっと入手しやすいようです。でもね、街の空気を感じながら自分の足で探したものとは、身につき方が違うと思いますね。
−−宝塚歌劇団は作・演出家も個性的な方が多いです
任田 世界が広くて物を知っているベテランのほうが変化を求めます。演出家が持っている美学と、ぼくがもっている美学を宝塚歌劇というジャンルの中での見せ方で融合していく。そうしてデザインが決まっていきます。
−−着るスターによって、デザインは変えますか
任田 役柄をつかむほうが先決です。その上でスターの特性などを加味し部分的に微調整はしますけど、何より脚本ありきです。舞台衣装は、デザインというよりメッセージなんです。セリフがなくても心情が伝わるように衣装で語るという作業が含まれる。そこが普通の洋服のデザインとは違うところですね。
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