初めての女役に挑戦したのが、平成16年の宝塚大劇場公演「
青い鳥を捜して」のシモーヌ役。かわいく、元気のいい役作りだった。「びっくりしましたよ。しかも相手役が恐れ多くも主演の
朝海さん(ひかる=雪組トップ)。ちょっとだけダンスのシーンもあったんですが、こうしたら女役さんがやりやすいんだとか、リードの仕方とかを学ばせていただきました。男役でも女役でも抵抗はないんですが、もともと女なのに何でできないんだろうと難しくて、新たな発見がありました」
「青い鳥−」の新人公演では一転、主役のジェイクをていねいに演じて、新公を卒業した。
17年は、宝塚バウホール公演「さすらいの果てに」のジェフリー少尉役で主演。全国ツアー公演「銀の狼」では主人公のシルバと敵対するジャンルイ役を演じて新境地を見せた。
今年は「
ベルサイユのばら−オスカル編」で、荒くれ男の衛兵隊士、アランとジェロワールの役替わり。「“ベルばら”は宝塚にいるからには出たいし、なかでもバスティーユの場面をやってみたいと、ずーっと思っていた念願が叶(かな)いました。オスカルさまが亡くなるときは毎回、涙、涙、でしたよ」
6月のバウ公演「やらずの雨」では徳兵衛役で主演。江戸落語をモチーフに、堅物の若だんなが道楽の果てに船頭になる人情劇だった。「ずっと落語漬けでしたが、けいこ場が楽しくて。谷先生(正純=演出家)に怒られる内容も、今度は役の心理的なものが多くなっていました。日本物にアタフタしている下級生たちに、私が答えられることは何でも教えようという気持ちになりました」。着実に成長していることを自覚できたようだ。
来年は入団10年目になる。「今は男役を見るのも演じるのも楽しい。自分はまだまだ未熟な気がしますが、少しは男役の土台もできたので、その上に飾りつけやスパイスを楽しんでやっていけたら、と気を引き締めています」
※音月桂の回は今回でおしまいです。次回は宙組の蘭寿とむです。