雪組 音月桂(3):タカラジェンヌ 夢の軌跡
緊張と怖さ年々増すけれど…
大阪夕刊 by 平松澄子
新人公演の主演は「猛き黄金の国」を皮切りに、平成15年に「春麗の淡き光に」の藤原保輔役、「RomancedeParis」のヴァンサン役、16年は「スサノオ」のタイトルロール、「青い鳥を捜して」のジェイク役と、じつに5回も経験している。
「慣れるってことは全くなくて、緊張と怖さは年々増えていきましたね。『スサノオ』のときは新公のお稽古(けいこ)中に突然、声が出なくなったんです。歌で綴(つづ)るお芝居だったんですが、私はこんなにノドが弱かったのかなとショックで…。初めて声をコントロールすることの大切さがわかりました。私はブレーキがかからない性格なので、それまでは若さで突っ走ってきたけれど、テクニック的なことも必要だって。それを見つけたときはすっごくうれしくて、以後はお稽古もルンルン気分でした」。悩んでも、立ち直りは早いようだ。
宝塚バウホール公演の初主演は14年のコメディー「ポップスコッチ」。立樹遥、壮一帆とともに3人主演で、音月は軍人のピーター役だった。翌15年のバウ・ワークショップ「恋天狗」でもコミカルな弥太役で主演している。「なんか、とても楽しかった記憶があります」
16年9月には東京・日生劇場公演「
花供養」に出演する。専科の轟悠が主演する歌も踊りもないストレートプレーで、かなわぬ恋を胸に秘めながら、兄である後水尾天皇(轟)のために尽くす近衛信尋を演じ、瑞々(みずみず)しい若さが光った。
「まだ新公中の身なのに、専科の上級生の方たちに囲まれてお芝居をするという、“VIPな経験”をさせていただきました。
春日野先生(八千代=専科で理事)もわざわざお稽古場に来てくださったんですよ。もう恐れ多くてひと言たりとも忘れちゃいけないと必死で聞いていましたね。それなのに初日にセリフが飛んだんです。極度の緊張でパン、と頭が真っ白になって、ホント土下座ですよ。ただ、専科のみなさんも毎回、緊張されていて、私だけじゃないんだって思いました」
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