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花組日生劇場公演「アーネスト・イン・ラブ」製作発表
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会見 一問一答 : 製作陣
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■小林公一理事長 東京・日生劇場公演はこれが4回目になります。今年の作品はおしゃれでコミカルで陽気。この作品はいわば宝塚歌劇団がみつけてきた作品だと思っています。梅田芸術劇場の月組版とはまた違った雰囲気をご覧いただけるのではないでしょうか。樹里咲穂はこれが最後の公演になりますが、大いに力を発揮してほしいと思います。9月は日比谷界隈を宝塚一色にしたいと思っています。
──これが樹里咲穂のサヨナラ公演になりますね
■小林理事長 はい、そうです。
──では、サヨナラショーは?
■小林理事長 検討中でございます。
■木村信司(演出家) この作品はオスカー・ワイルドが原作で、1960年にオフブロードウェイのミュージカルになっています。興味深いのは大手の米コロムビアレーベル(当時)からキャスト版のレコードが発売されたことです。ということは、当時、結構ヒットしたのだと推察されます。現代で再現するにはちょっと分かりにくいところがあるのも事実です。そもそも19世紀に書かれた原作を1960年にミュージカルにしたわけですから、現代の視点で見るとずれているところはある。幸い、オフブロードウェイの作品の場合、ブロードウェイ作品ほど厳しい制約がないので、こちらで変更を加えることができます。そこで分かりやすく、広く受け入れられるミュージカルにしようとがんばりました。
5月30日から月組の稽古を始めました。宝塚の場合、“脚本読み”(脚本を読むだけの稽古)は集合日(出演する生徒、関係スタッフ全員が顔合わせをする日)だけなんですが、今回はストレートプレイ作りふうの作り方をしようと考えて、脚本読みもじっくりとやっています。
考えたのですが、原作はエリザベス朝演劇のように男性の役者だけで成立することを前提としていたのではないか。ということは、まさに(女性だけの)宝塚にうってつけではないか。男役はより男らしく。娘役はより女らしく。そこをとことんやれば、いいのではないか。男女の違いを超えたところから、改めてその違いを描くことにおもしろみがある。宝塚の正攻法でやれば突破口は開ける。
ちょうどパリで脚本を書きました。(貴族の息子との同性愛が発覚したことで投獄され、釈放後渡仏してパリで客死したオスカー・ワイルドの)墓がありますので、墓参りに行き、「女の子ばかりの劇団で上演しますが、どうでしょうかね?」と尋ねたら、「別に驚かないね」という声がどこからともなく聞こえたような気がしました。それもありだと思っていてくれたのではないか。
ポスターをご覧いただければ、月組との違いがもう出ています。ポスター撮影では細かい指示は出していないんです。ただ、4人を集めて、位置だけを決めてドンっと撮影した。撮影スタッフが「これはふつうのタレントでは成立しません」と言ってくれました。つまり、宝塚の基本はアンサンブルなんです。そして周囲の雰囲気に合わせて演じるのが基本になっている。さらにアンサンブルの中で個性を発揮する。このポスターにはそういう特徴がよい形で発揮されているのでは。
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ポスター。右は月組版。樹里咲穂いわく「私たちのほうは、なんだか貴族っぽくない…」。ネコはCGで、「物語と直接関係はない」。花組版はさらにCGで黄色いチョウが加えられている。 |
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──理事長によると、この作品は宝塚が発見したのだというが
■木村 ブロードウェイ作品を使用するのは金銭的にも高いという側面がある。われわれはロングラン公演を打てるわけではない(公演期間が決まっている)のだから、わざわざそういうものをもってくるだけでよいのか。そういう疑問が制作部のほうにあったそうです。オフブロードウェイの、いわば隠れた作品を宝塚の演出家が改めるほうが将来性があるのではないか。これまでのやりとりで欧米とのパイプもできています。それで米国側からこの作品はどうだと提案され、僕のほうに話がきたわけです。脚本を読んでこれは、うまくできる可能性があるなと感じました。つまり、劇団が探していた。米国側から提案された。私がそれを冒険として受け入れた、ということです。
──花組版ならではの変更はあるのか
■木村 基本的には何も変えません。僕はこれで喜劇は3作目ですが、今回はアドリブに頼らずキチンとしたものを作りたい。まずは月組でやってみて、それがどう花組にはまるか。
──音楽のリー・ポクリス氏はあまり聞かない名前だが
■木村 不勉強ですが、ほかにどんな作品があるのかを知りません。90いくつでご存命らしいです。といってもすでにスコア(総譜)はきています。とてもパワフルで、1950年代の、ビートルズを筆頭とする英国ロックバンドの進出以前の米国音楽を想像していただければいいのでは。パワフルでシンプル。
ところで、送られてきた総譜はなぜか5、6人編成用でした。当方は15人編成ぐらいでやりますので、そのあたりの編曲、さらにシナリオを変えていますので、当然、流れも変わる。従いまして原曲の旋律は使いながら構成に合わせて変える作業を音楽監督の甲斐正人にお願いしています。
──オーケストラボックスは…
■木村 ボックスではないです。楽団は舞台上にいますが、ご覧いただければ、なるほどこういうふうに配置するのかと思っていただけるのでは。
──樹里、遠野の魅力は?
■木村 バウホール公演「FREEDOM〜ミスター・カルメン〜」(12年)を一緒にやったけど、楽しかった。あのとき、きっとまたいつか一緒にできるだろうと思っていました。また私と会えて幸せといってもらえたのでうれしかったです。「FREEDOM〜ミスター・カルメン〜」と違う可能性を探れるのがうれしいですね。ひとことでいえば実力派ですね。歌、踊りに不安がないから、役の本質にのみ集中して考えられる。それから、現代派。モダンな感じがふたりにはありますね。桜一花には思い切りのよさがある。そこが楽しみ。
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会見後、テレビクルーから個別のインタビューを受ける樹里咲穂=東京都内のホテル |
──作品について改めて説明すると
■木村 パワフルな曲と出演者をどうぞお楽しみに。今、ミュージカルに求められるものってどんどんヘビーになっている。「エリザベート」もそうだし「レ・ミゼラブル」も。「オペラ座の怪人」もそうですね。ある種の重さ。今回の作品は1960年代米国ミュージカルならではの楽しく、軽く、弾むような内容。肩の力を抜いて劇場に足をお運びいただきたいです。
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