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専科 松本悠里(1):タカラジェンヌ夢の軌跡
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踊りで語る日舞のスペシャリスト
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日本舞踊のスペシャリストが、久しぶりに星組公演の人情劇「長崎しぐれ坂」に特別出演。轟悠(専科)と湖月わたる(星組トップ)がガップリ絡む“男っぽい芝居”の中で、江戸の芸者、長崎・丸山の花魁(おいらん)、精霊流しの女Sを巧みに演じ分けて、艶(あで)やかな舞い姿を見せてくれた。その東京宝塚劇場公演が8日から始まる(8月14日まで)。
「セリフは一切ありませんが、すべての踊りがお芝居に関係あって、お芝居に溶け込んでいる。個性の全く異なる三つの役を“踊り分ける”のは、長い舞台生活でも初めてですね。このところ日本物ショー以外に出ることがなかったので、お芝居の中で踊るのがこんなに楽しいものかって、改めて思いました」と、たおやかに笑った。
プロローグの神田明神の祭りのシーンでは、小粋な芸者。洋楽で日舞を踊る宝塚では珍しく、三味線の“大和楽”で舞う。「ちゃきちゃきのあずま芸者は、日舞の基礎です」。次いで異国情緒あふれる長崎のシーンに変わり、勇壮な蛇踊りに誘われるように、真っ赤な着物の花魁がセリあがってくる。「早替わりで出てくるんです。すごく派手で重たい衣装。ゆったりと踊っています」。どちらも、まるでお人形が動いているような美しさ、かわいさに魅せられる。
そして最後は、クライマックスの精霊流しを先導する踊り手。追いつ追われつの捕り物劇の背景を、モノトーンの着物で静かに淡々と、無表情に練り歩いていく。
「顔には出さないけれど、心の中ではすごい表情を出して踊っているんですよ。何度見てもいいなぁと思えるお芝居なので、みんなの不幸、悲しみを背負って流しましょうって祈りながらね。動きを抑えた一種の地唄舞の世界だけれど、音楽のリズムはボレロ。私は勝手に“ドラマチック舞踊”と名付けているんです」
常々「踊りは体で語るセリフと思っています」という、言葉通りの表現力と説得力はさすがだ。(つづく)
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