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宙組 和央ようか(3):タカラジェンヌ夢の軌跡
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当たり役 苦労重ねた「ファントム」
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「ファントム」の怪人役 |
舞台人生でターニングポイントになった作品を聞くと、意外にも平成6年の宝塚バウホール「2人だけの戦場」と、ロンドン公演をあげた。
「それまでは大声を出して、常に必死にセリフを言っていたんです。それが、大きい声や必死さだけがお芝居ではないんだと分かりだした。そのあとのロンドンは、初めて雪組以外の人たちと一緒の公演で、取り残されないようにとすごい集中力でがんばりました」
入団6、7年目で急激に成長した時期だったのだろう。10年に宙組に組替えになり、12年には姿月あさとのあとをうけて2代目のトップに就任。宝塚大劇場のお披露目公演は「望郷は海を越えて」「ミレニアム・チャレンジャー」だった。「トップになって何が変わったという感覚はなかったんですが、客席ではファンの方が泣いてる。自分のことのように喜んで下さっているのに感謝しましたね」
2作目が「ベルサイユのばら〈フェルゼン編〉」で、そのあと「カステル・ミラージュ」、「鳳凰伝」、「傭兵ピエール」と続き、最大の当たり役になった「ファントム」(16年)に出合う。「オペラ座の怪人」をもとにしたアメリカのミュージカルの宝塚版。醜い顔の傷を仮面で隠した怪人の心の闇を、ていねいな演技で人間味豊かに表現し、大きな感動を呼んだ。
「主演作品にはそれぞれ思い入れがあるんですけど、もう1回やりたいと思うぐらい気に入っているのは『カステル・ミラージュ』。それを上回ったのが『ファントム』かな。見かけが全く宝塚的じゃないし、顔を隠す主役なんてお手本もない。半年以上前から何度も打ち合わせして、顔の傷とメークと仮面と髪の毛に関しては、自分でも考えて本当に労力を費やしたんです。歌もメロディーは美しいけれど難しかった。すごく苦労したけれど、あの役にめぐり合えて本当によかった。公演を終わりたくない気持ちでしたね」
そんな努力の汗がしみ込んだ傷や仮面などの“ファントム・セット”は、すべて記念にとってあるそうだ。
(つづく)
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