花組 彩吹真央:タカラジェンヌ 夢の軌跡(3)
抜群の歌唱力で存在感を強める
7月14日(金) 大阪夕刊 by 平松澄子
新人公演を卒業したあと、平成14年に宝塚大劇場のショー作品「Cocktail」で初めてソロを歌い、大いに歌手としての実力を発揮する。「自分の中で強く印象に残っている作品です。ずっとこういうシーンにあこがれていたので、毎日毎日、心を込めて歌いました」
同じ年に宝塚バウホール公演「月の燈影」で、蘭寿とむと共に初主演。友情厚い博打打ち、幸蔵を情感豊かに演じた。「江戸時代の話で、それまでやったことのない黒っぽい役。着流しの姿をどう見せるか、決め方を研究しました。日本物の化粧や所作など勉強することが多くて、主演というプレッシャーはあまり感じないでやれた気がします」
雪組時代も日本物が多かったが、花組でも新公の初主演やバウ初主演と、ターニングポイントになぜか日本物と縁がある。「そうですね。日本物で学ぶことはすごく多いです。最近でも『天の鼓』(16年、大阪シアター・ドラマシティ公演)で、ありえないような極悪な帝を演じさせていただいたんですが、ほとんど動きがない役。肝が据(す)わってどっしり構える存在の仕方、自分の中で落ち着くということを勉強できました」
ウィーン・ミュージカル「
エリザベート」も縁の深い作品になった。入団2年目の8年に初演の雪組で出演しているが、14年には皇太子ルドルフという大役で2度目の出演。「大好きな作品です。1回目はオーディションで黒天使に決まってうれしかった。ただ、まだ入ったばかりで、上級生にまじって必死に踊っていました。2回目の成人ルドルフ役は2幕目だけの出番でしたが、皇帝になれたはずの彼が不幸な死を選ばなければならなかった弱さ、繊細なところを表現するようにしたかった」という。
その透明感のある役作りに加えて、トート役の花組トップ、春野寿美礼とのデュエットは抜群の歌唱力で高い評価を得た。この作品から花組の男役スターとして存在感が大きくなり、さまざまな役で演技の幅を広げてゆく。