■ONE HEART 揺れるペンライト
「NEVER SAY GOODBYE」終演後の午後4時45分から和央を中心とした退団者らによる特別の演し物である「和央ようかさよならショー」が行われた。
幕が上がると舞台中心に、右手を上げた後ろ姿の和央がいた。まずは昨年12月のシアター・ドラマシティ公演「W−WING」の「W・I・N・G」という歌。和央が2メートルの高さのフライングのシーンでバランスを崩して舞台上に転落。骨盤骨折により全治1カ月のけがを負い、公演が途中で中止になったいわくつきの公演だが、和央が客席側に振り返るや観客は総立ちに。リズムに合わせて手拍子が打たれた。続く、「ミレニアム・チャレンジャー」まで、客席はノリノリだ。
「鳳凰伝」(2002年)で歌われバラード「されど夢」が始まると観客は着席し、配られていたペンライトを静かに振る。ハートの形のペンライト。「WAO」「ONE HEART」の文字が書かれている。「ONE HEART」は「NEVER SAY GOODBYE」の中のひと幕の題名だ。まさに客席の心がひとつになった。
この日やはり退団する織花なるみ、月丘七央、夢大輝、毬穂えりなによる「ゴーイング・ハリウッド」(「カステル・ミラージュ」より)をはさんでトレンチコートにソフト帽という出で立ちに着替えた和央がやはり「カステル・ミラージュ」(01年)から表題曲を披露。舞台下手でコートを脱ぎ捨て、蝶ネクタイを緩めると男役9人を従えて、これも「カステル・ミラージュ」から「レオナードの幻想」で、まさに幻想的なダンス。
大和悠河、紫城るいによる「レヴュー伝説」(05年の「レヴュー伝説」より)をはさんで、「ファントム」(04年)から4曲。まず「僕の悲劇を聞いてくれ」。中央に怪人ファントムの姿になった和央が舞台にせりあがるやマントを翻してうたい出す。大太鼓による重いビートが重厚感を演出する。花總が登場して「You Are Music」。青い光に包まれた銀橋を渡りながら、はかなく美しい二重唱をじっくりと聞かせる。和央が「Where In The World」を独唱し、白いドレスの花總が「Home」を独唱。
銀橋の中央でうたい終わった花總が両腕を高く掲げると舞台後方に大階段が現れ、階段中央にラメの入った白タキシード姿の和央が登場。「GIGIのデュエット」(05年の「レヴュー伝説」)でデュエットダンスだ。客席は再び総立ちとなり、出演者全員が舞台に現れて「愛の星」(同)で締めくくり。盛んにペンライトが振られる客席に向かって和央が大きく両手を広げたところで幕が下りて約35分のサヨナラショーは終わった。
■続くカーテンコール
続いて組長の美郷真也が和央、花總を含む6人の退団者を紹介。和央と同期の美郷。どこか湿った声だ。
やがて退団者本人によるあいさつ。午後5時35分、美郷に「はなちゃん」と愛称で呼ばれると「ハイッ」と答えた花總が、タカラジェンヌの正装である緑のはかま姿で大階段を下りてきた。
「退団を発表した後、時は確実に過ぎていくものだということを実感しました」と切り出した花總は「入団して15年。私なりに一生懸命に歩んできましたが、それもきょうが最後かと思うと不思議な気がします。いっしょに舞台を作ってきたみんなと、もうお別れなのかと思うと寂しいです。今までほんとうにありがとうございます」と心情を明かし、ファンやすべてのスタッフへの感謝の言葉を次々に述べた。
さらに「最後に和央さんのファンのみなさま、本当にありがとうございました。もう、この言葉しか見つからないのです」と相手役である和央のファンへも感謝を述べた。この瞬間客席のあちこちからすすり泣く声が聞こえ始めた。
最後は大きな声で「すべての方に心からの感謝の気持ちを込めて本当にありがとうございました」と述べると、客席から長く大きな拍手がわき起こった。
そして同5時49分。出演者全員が「たかこさーん」と愛称で呼びかけると和央が大階段から下りてきた。大劇場のとき同様、黒エンビ姿だ。会場のすすり泣きの声はいよいよ大きくなった。
組からのお花渡しは4班に分かれた全員から。そして同期の代表として美郷が花を渡した。
「とうとう、最後のごあいさつのときがきてしまいました」と切り出した和央。
「宝塚大劇場の初日からきょうまで、みなさんと手をつないでゴールすることを目標に生きてきました。毎日必死でしたが幸せでした」と、まずはファンに感謝の言葉を述べた。
そして「88人の仲間たち。もうこのメンバーで公演することは、2度とありません。みんな毎日笑顔をくれました」と言うや、背後に控える出演者のほうに向いて「本当にありがとう」と仲間への感謝の言葉。
次に「花總まり。彼女が私の相手役で幸せでした。ありがとう」と、相手役の花總を見つめ、再び客席に視線を戻すと「タカラヅカの和央ようかに別れを告げます。みなさんの心の中にいつまでも生き続けられますよう。本当にありがとうございました」と決別の言葉を告げて深々とお辞儀をした。
組長の美郷は、締めくくるためにマイクの前に立ち「このかけがえのない仲間たちと作ってきた大切な時間を、私たちは忘れません」と述べたところで、言葉を詰まらせ、和央に向かって深々と一礼。和央もまた腰を折った。
「すみれの花咲く頃」の合唱が終わって同5時57分、幕は下りたが、この後20分近くもカーテンコールが繰り返された。花總とふたりで銀橋を渡りながら「このコンビを忘れないでね」。あるいは「こんなに長く宝塚にいるとは思いませんでした。19年間みなさまのおかげで続けさせていただきました」と、繰り返し感謝の言葉を述べた。花總が「たかこさん、最高」と叫べば和央が「NEVER SAY GOODBYE」とこたえる場面も。