平成14年の宝塚バウホール公演「ヴィンターガルテン」では、朝澄けいと2人で初主演を果たす。恋と友情の愛憎劇で、ナチス親衛隊のクラウス役だった。
「朝澄さんとは兄弟のように育ってきたので、お兄ちゃんについていくって感じ。主演のプレッシャーはなかったですね」
翌15年はさまざまな出合いがあり、多くのことを学んで、また一段とステップアップする年になった。
5月に東京・日生劇場公演の第1弾となったブロードウェー・ミュージカル「
雨に唄えば」で、無声映画時代の女優リナ・ラモントという女役に初挑戦。キーを高くした素っ頓狂な声でセリフをしゃべり、コミカルな演技で“怪演”して、強烈な印象を残した。
「リナは変わった声の個性的な女性という役。自分が出せるいろんな声を出してみて、声楽の先生と高い声でいこうと決めたんです。あの声の出し方は海外では一番、ノドに負担がかからないんですって。みなさんに喜んでいただいて大成功でした。ただ、スカートでウエストを締めたり、ハイヒールをはくことに慣れていなかったので、稽古中は結構つらかった。女役さんって大変ですよね」
7月には宝塚大劇場公演「
王家に捧ぐ歌」で、黒塗りしたエチオピア王家の元家臣カマンテ役。11月には初めての外部出演となった大阪・梅田コマ劇場公演(当時)の「
シンデレラ」で、鳳蘭らの大先輩たちと共演して、かっこいい王子を演じた。
「いつも濃い役ばかりだったので、純二枚目の白っぽい役は初めて。手も足も出ない状態のうえに、上級生の方々とご一緒ですから、最初はすごく緊張しました。でも、みなさんやさしくて、今ではもう一度やりたいくらい。『貴族でも人間なんだから、自分のやりたいようにやればいいんじゃないの』とアドバイスされて。そうだ、品の良さは忘れずに、普通にやればいいんだとわかったんです。役作りは常に不安だから、何でも言っていただけるのはありがたいし、自分で気付くことが大切ですね」