ENAK LONG INTERVIEW VOL.23
歌手
鈴木康博(3)
FORWARD 前進
「FORWARD」は、12曲のオフコース時代の楽曲のカバーに1曲の新曲「明日の風に吹かれて」を加えた構成だ。「明日の風に吹かれて」は、♪君に今会いに行きたい 僕から言い出した別れなのに身勝手だよね 君の仕事に感じてしまったjealousy…と歌う。「小田の楽曲に勝るものを書けない自分にジレンマを感じた」という発言に照らせば、ここで歌われる「君」は、小田のことではないのか。オフコースのことではないのか。
「もしもオフコースがまだ存在していたら、こんな新曲を書いていただろうという前提で曲作りに着手したのですが、結局、うまくイメージがわいてこなくて、しばらくは放置していました。その後、ごく一般的な再会を主題にして再着手。昔の恋人にちょっと会ってみたいなという気持ちは、だれにでもあるんじゃないかな。それも旅の空の下でフッと会うのなら、重くなくていいのではないか。確かに、おれにとってその相手はオフコースだったりするかもしれない。オフコースのことが頭から離れたことはないですから」
小田が自分のテレビ番組「月曜組曲」(TBS、深夜0時半)で、オフコース時代の写真などを“小道具”としてさりげなく用いたことも、無意識のうちに眠る気持ちを刺激したのかもしれない。
「歳なんだと思います。小田も『人生の締めくくりの時期を迎えた』というようなことをいったらしいですから。僕らは間もなく60歳を迎える。60歳になるまでに何をしようかとみんな考えるわけです。こんなこと今までは考えたこともなかった。これからどうしようということばっかり考えていましたから。これは“60歳の壁”というやつなのかもしれませんけどね」
60歳の壁を前にして、やれるうちにやっておくべきことは何かを考えているということだ。ならば、オフコースを再結成してしまえばいいではないか。再結成したいといえばいいではないか。だが、そこまでは断言できないのだともいう。少なくとも、自分の思いだけで口にでることではない、と。
大物バンドの再結成は巨大なビジネスになる。純粋な音楽的理由だけで集まりたくても、カネのにおいに敏感な有象無象があっという間に群がってくるだろう。そんな事態は避けたい。それでは、旅の空の下でフッ会うことにはならない。新潟県中越地震の被災地に、小田とふたりでふらりと出かけて被災者を励ますために歌うようなことができたらいいなあ、ともいうが、もちろん、それも難しい。
ただ、気持ちだけは、オフコースの時代に立ち返った。自分から去ったオフコースという場所が無性に懐かしいし、わだかまりはなくなったといってよさそうだ。そのうえでさらなる前進をしたいと思っている。そのことは、これからの作品づくりのうえで大いにプラスに働くに違いない。
「今、自分が感じることは何か。新しいものは何かを考えながら次の曲を作っていきたい。時代のこと、自分の気持ちを歌にしていきたい。それがFORWARDということだと思う」
TEXT & PHOTO BY TAKESHI ISHII/石井健
|
|
|
|
|
|
|
FORWARD
鈴木康博
TOCT-25583 ¥3,000(税込)
01.明日の風に吹かれて
02.愛のゆくえ
03.素敵なあなた
04.汐風のなかで
05.潮の香り
06.恋を抱きしめよう
07.雨よ激しく
08.君におくる歌
09.ロンド
10.青春
11.恋人よそのままで
12.いくつもの星の下で
13.一億の夜を越えて
|
|
|
|
PROFILE |
|
昭和23年2月18日、静岡・修善寺生まれ。横浜で育つ。中学生のころからアメリカンポップスに影響されギターを持つ。東京工業大学在学中に、友人の小田和正らとオフコースを結成。
57年、オフコースを脱退。58年、アルバム「Sincerely」でソロデビュー。59年、コカコーラのCFイメージソングを制作し、フジサンケイグループ広告大賞特別音楽賞を受賞。
63年から平成9年まで軽井沢ホテルメゾンでクリスマスコンサートを、また元年〜5年まで、渋谷パルコ劇場で5〜6日間に及ぶロングコンサートを行い、毎年春・冬の定番イベントとして人気を集める。
12年、デビュー30周年を迎え、1月9日に東京国際フォーラム、11月14日に東京FMホールでコンサートを開催。4月1日ダブルネックレコーズを設立。また山本潤子、細坪基佳とユニット“Song for Memories”を結成し、全国各地でコンサートを開催。
13年、ファン投票により選曲されたリクエストベストアルバム「Reborn」を発売。(公式サイトから抜粋) |
|
公式サイト
http://www.omgnet.co.jp/ |
|