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鈴木康博 ENAK LONG INTERVIEW VOL.23
歌手
鈴木康博(2)

「さよなら」を歌ったっていい
封印から22年。「FORWARD」ではオフコース時代の12曲をセルフカバーしている。「潮の香り」「雨よ激しく」「青春」の3曲は、完全コピーに挑戦したという。オフコースの録音を聴き直し、全楽器の演奏をそっくりそのまま再現したのだ。コンピューターによるいわゆる打ち込み部分をのぞいて全楽器をひとりで演奏した。

「ひとつのきっかけは、年齢です。50歳を超えたころから、過去を振り返ろうという気持ちになった」

平成13年に、ソロになってからの楽曲をセルフカバーした「Reborn」というアルバムを作ったとき、オフコースの楽曲にも挑戦してみたいという気持ちが芽生えた。コンサートで、ギター1本でオフコース時代の歌をつま弾いたら大歓声を浴びた。尋常な量の拍手ではなかった。

「突っ走っているから、自分では分からないけど、オフコースの曲は、お客さんにとって大きな意味をもっているんだ。それを認めざるをえなかった。自分が通ってきた現実でもあるし、客席と一体になれるのならライブに欠かせないレパートリーになる。今では、喜んでもらえるのなら『さよなら』を歌ったっていいとさえ思っている」

「さよなら」は54年のオフコースの大ヒット曲だが、小田和正の作品なのだから驚くべき発言だ。が、本人は淡々という。

「喜んでもらえるなら、なんでもやりますという気持ちになった。年相応の自然な変化だと思う」

そして昨年暮れから、セルフカバーの作業に着手した。

「全部の楽器を自分でやったら非常に心地よかった。自分の居場所をみつけてじっくりと取り組んでいるという感じがした。完全コピーもやってみたらおもしろかった。『こんなふうにしていたのか』と改めて分かったこともたくさんあった」

オフコース時代は録音スタジオを自由に使うことができたという。スタジオにある楽器を手当たり次第に使って音を重ねた。和楽器にまで手を伸ばした。

「改めていい時代だったなと思いながら作業した。しかし、単に“Looking back”しているだけだと懐古趣味になってしまうので、『Forward』=前へという題名にした。これまで自分は前を向いていよう。先に進もうとやってきたのだから」



TEXT & PHOTO BY TAKESHI ISHII/石井健




FORWARD
FORWARD
鈴木康博

TOCT-25583 ¥3,000(税込)

01.明日の風に吹かれて
02.愛のゆくえ
03.素敵なあなた
04.汐風のなかで
05.潮の香り
06.恋を抱きしめよう
07.雨よ激しく
08.君におくる歌
09.ロンド
10.青春
11.恋人よそのままで
12.いくつもの星の下で
13.一億の夜を越えて

PROFILE
昭和23年2月18日、静岡・修善寺生まれ。横浜で育つ。中学生のころからアメリカンポップスに影響されギターを持つ。東京工業大学在学中に、友人の小田和正らとオフコースを結成。

57年、オフコースを脱退。58年、アルバム「Sincerely」でソロデビュー。59年、コカコーラのCFイメージソングを制作し、フジサンケイグループ広告大賞特別音楽賞を受賞。

63年から平成9年まで軽井沢ホテルメゾンでクリスマスコンサートを、また元年〜5年まで、渋谷パルコ劇場で5〜6日間に及ぶロングコンサートを行い、毎年春・冬の定番イベントとして人気を集める。

12年、デビュー30周年を迎え、1月9日に東京国際フォーラム、11月14日に東京FMホールでコンサートを開催。4月1日ダブルネックレコーズを設立。また山本潤子、細坪基佳とユニット“Song for Memories”を結成し、全国各地でコンサートを開催。

13年、ファン投票により選曲されたリクエストベストアルバム「Reborn」を発売。(公式サイトから抜粋)
公式サイト
http://www.omgnet.co.jp/
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