「さよなら」は54年のオフコースの大ヒット曲だが、小田和正の作品なのだから驚くべき発言だ。が、本人は淡々という。
「喜んでもらえるなら、なんでもやりますという気持ちになった。年相応の自然な変化だと思う」
そして昨年暮れから、セルフカバーの作業に着手した。
「全部の楽器を自分でやったら非常に心地よかった。自分の居場所をみつけてじっくりと取り組んでいるという感じがした。完全コピーもやってみたらおもしろかった。『こんなふうにしていたのか』と改めて分かったこともたくさんあった」
オフコース時代は録音スタジオを自由に使うことができたという。スタジオにある楽器を手当たり次第に使って音を重ねた。和楽器にまで手を伸ばした。
「改めていい時代だったなと思いながら作業した。しかし、単に“Looking back”しているだけだと懐古趣味になってしまうので、『Forward』=前へという題名にした。これまで自分は前を向いていよう。先に進もうとやってきたのだから」
TEXT & PHOTO BY TAKESHI ISHII/石井健