ENAK Interview 2004
VOL.18 竹仲絵里 (2) |
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アルバムについて具体的にうかがいます。まず、タイトル「秋晴れモノラル」とは?
■竹仲絵里:秋生まれの私は秋が大好きなんです。夏は放出する季節。秋は、夏に空っぽになった心と体にいろいろなものを吸収するとき。そんな秋の晴れた午後に似合うアルバムを作りたいと考えました。今ってすごくステレオ的な時代。ごちゃごちゃしていて、聴きたくないことまで耳に入り、その結果、自分らしさを失ったりしがち。耳を休めて、リラックスして聴ける作品、秋の日差しの中で聴けるアルバムになったらいいなと思いながら作りました。そして、60−70年代にあったようなリアルな、体温を感じられるようなサウンドを作りたかった。心の中の小さな箱の中に押し込んだいろいろな思いを、スクリーンに映し出すようにして表現して、同年代の女性の聴き手に届けたいと考えました。
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昭和55年11月15日生まれ。父親の影響で、Joni Mitchell、Rickie Lee Jonesや、CARPENTERS、Stevie Wonder など主に1960〜70年代のアーティストに影響される。アコースティックギターに目覚め作詞作曲を始める。平成14年8月、シングル「my duty」(HIGE RECORDS) を外資系レコード店限定で発売。同年12月にミニアルバム「four-leaf clover」、15年7月にマキシシングル「余韻」を、外資系店のインディーズチャートでトップセールスを記録した。日本の女性アーティストとして初めて“GIBSON PRESENTS ACOUSTIC MUSICIAN AWARDのイメージアーティスト”に選ばれた。来年春には江口洋介、安藤政信、宮崎あおい、松田龍平らが出演する映画「ギミー・ヘヴン」の主題歌を担当する。
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ご自身からみるとどのような作品だといえますか?
■竹仲:メジャー第一弾だからといって気負った作品にはしたくなかった。初アルバムだからこそ自分のルーツが分かるようなものにしたかった。私の好きな70年代のアーティストが残した作品のように何度聴いてもあきないアルバムを最初に作ることができたら、次の作品では遊べるのではないかという計算もありました。ともかく、派手ではないけど、残る音楽を目指し、インディーズ時代のミニアルバムとは違う私の顔が出せたと思っています。私自身が色濃く出ているのは「まなざし」という歌ですね。私はもしも〜だったら…というようなことをよく考えるんですが、ちょうど夜中に地震があり、もしもこれが大地震だったら…と妄想が広がったのがきっかけでできた歌です。テロ、大地震…。そのときに、私がさがすものは何かを考えたら、身近にある幸せら気づいた。この歌はAメロとBメロ(=旋律の前半部分)は日常的なことをつづった歌詞で、サビは非現実的な場面に変わるんですけど、実は両方とも私にとっては紙一重の世界なんです。
──今回、4曲が後から修正できない、いわゆる一発録りだそうで
■竹仲:メジャーから作品を出すことでより大勢の人に聴いていただけます。そのとき、いままでコツコツやってきたこととと、今の私とを詰め込みたかったからです。一発録りなら、その瞬間瞬間をCDに収録することになる。写真を撮るように、その瞬間を切り取って残すことができると考えたんです。
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ボブ・ディランの「アイ・ウォント・ユー」をカバーしていますが、これは?
■竹仲:ディランも私の原点のひとり。ディランて、最初はエチオピア難民救済のために録音された「ウィ・アー・ザ・ワールド」(1985年)の宣伝用ビデオの中で、だったんです。中学生のトキ、授業の一環として見たんですが、マイケル・ジャクソンやスティービー・ワンダーら大勢のアーティストが少しずつ歌っていく。ほかの人はみんな熱唱しているのに、ひとりだけやる気がなさそうに歌っていたのがディランで、だから、その存在感は衝撃的でした。そんなディランも私の原点といえる。ディランを知らないような、私と同世代の女性にもディランを知るきっかけになればいいなと思っています。
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後記
質問に対してハキハキとこたえる。背中がピンとしている。そんな印象が残っている。インディーズ時代に、弾き語りのライブが多く、舞台では自分のほかにギターしかいない、というわけで、ギターは今や大切な“相方”だという。3年前に米ギブソンのギターを買ってからはいとしさもひとしおとか。そのギブソンからは、アコースティックギターのイメージアーティストにという声もかかったという。残念ながら取材時、愛器はオーバーホールで“入院中”だったが、「写真は必ずギターと一緒にお願いします」とねしっかりとギターを抱える。ほおを寄せ合う恋人同士を撮影している気分になった。ところで、アルバムの音だが、レコード会社はカーペンターズのような…というのだがね個人的にはカーペンターズに楽曲を提供したシンガーソングライター、ポール・ウィリアムスのアルバムのほうを思い出す。 |
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