ENAK Interview 2004
VOL.16 amin (2) |
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アルバム「おなじ空の下」について、細かくうかがいます。1曲目「Spicks and Specks」は、CMで使われました。ビー・ジーズの歌ですね
■amin:さわやかなメロディーだがら青春をテーマに中国語の歌詞をつけました。中国語ですが、日本のみなさんの耳にも残りやすい単語を繰り返し使うよう工夫はしました。
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2曲目の「China Dress」は、うってかわって迫力あるサウンドです
■amin:これは香港の、東京でいえば六本木みたいな場所を舞台にした歌です。実際に行ってみると「ここはどこ?」というような場所。ぜひ歌として表現したかった。2年前に書いた歌詞です。1920−30年代の上海は“東方のパリ”と呼ばれていたそうです。だけどその後、文革があったりして一時期、上海は寂れてしまいましたが、上海人って生活に余裕がなくても小粋さは心がけているんですよ。
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小粋だなんて、いい言葉を知っていますね
■amin:大好きな言葉。
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日本人は小粋なんて気持ち、忘れちゃっている
■amin:そうなんですか?
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3曲目「Days Like This」もCMで使われた歌ですが、これは英語で歌っていますね。ストリングスのアレンジが印象的
■amin:
美しいでしょ、弦楽の響きが?
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フランスの歌手、フランソワーズ・アルディの大ヒット曲「さよならを教えて」。これは、作曲者が聴いて、あなたの中国語がフランス語に聞こえたといわれたそうですね
■amin:
私、セルジュ・ゲンスブールが大好きで、彼を通してこの曲を知り、ぜひ自分のアルバムに入れたいなと思っていました。てっきりシャンソンだと思っていたら、米国ロサンゼルスで録音した際、事務所の現地スタッフから「これは米国人が書いた歌だ」と教えられびっくりしました。そのうえ「作曲家と知り合いだから、ちょっと呼んでくるよ」と。録音中にこられて「中国語で歌われたのは初めてだから、ぜひ広めてほしい」といわれました。できあがったCDも送らせていただきましたが、とても気に入っていただいたみたいで。中国の「楊琴(やんちん)」も伴奏に入っています。
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「少女模様」という歌は大陸的な旋律ですが、作曲は日本人なんですね
■amin:
歌詞は、上海に対する私の思いをつづりました。帰るたびに上海はものすごく変わっています。発展して変わるのはうれしいけど、地下鉄を作るために歴史あるビルを壊したり、記憶の中に残っている余裕のある上海、温かみのある上海が、どんどん消えていくのが寂しい。そういう想いで歌詞を書きました
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上海も東京みたいになるのかな?
■amin:
でも、最近、これではいけないと気づき始めたみたい。古い洋館を残したりし始めています。
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「Forever Eighteen」は、スパニッシュサウンドですね。中国では18歳は少女を象徴するそうで
■amin:
いちばん、輝いているときは18歳だという意味ですね。20歳のあなたも、これを使えば来年は18歳になれるっていう石けんのCMが話題になったこともあるぐらい。中国人にとって18歳がいかに魅力的な年齢であるかということ。ちなみに中国には成人という概念はないですよ。
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逆に言うと19歳になったらもう大人
■amin:
そういうことですね。
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この歌詞は、いつまでも18歳の気持ちのままでいたいという意味ですか?
■amin:
なにがあってもそういう純粋な気持ちを忘れずに、夢をもっていてほしいな。
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ご自分は?
■amin:
そうですね、私もけっこう素直で、その分、傷ついたりするんですけど、後悔するのが大嫌いだから、常に自分を裏切らないで、したいことをしていきたいな。
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だけど、こうしてアルバムが出て、夢はかないつつあります
■amin:
夢は信じます。信じているから、今までやってこれたんだろうな。
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7曲目「これからもう会えなくなるかな」は言葉のリズムへの乗せ方も独特ですね。ぶつ切りにした感覚は、あえて言うなら宇多田ヒカルに似ているかな
■amin:
ああ、そうなんですか? 日本人と同じにはできないだろうと思うし、同じことをしてもしようがない。多少おかしくても、それを自分の味にできたらいいかなねと思っています。
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日本人では気づかない言い回しなどされるとハッとしたり、ドキっとしたり。ひっかかるものがあるでしょう。もしかしたら今の日本の若者の日本語より、あなたの日本語のほうがきれいかもしれないけど…。「これからもう会えなくなるかな」は、どうやって生まれたの?
■amin:
これも2、3年前に書いたのかな。私の歌詞はふだんの私の生活そのままなんですよ。
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もうこの人と会えなくなるかなと思うような瞬間があったわけですね?
■amin:
あったですねえ。もう、会えないかなって。ありました。
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「Butterfly」はピアノ主体のバラードで、ウーロン茶のCMのイメージに近いですね
■amin:
そうですか
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「上海ムーン」はベートーベンの「月光」を大胆に引用して
■amin:
主旋律はまるで別、伴奏のピアノは、ベートーベンのまま。ベートーベンの曲を伴奏にしてしまった、みたいな。大好きです。美しくて哀愁を感じて。
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「大きな河と小さな恋」は、ニューバージョンということですが
■amin:
録音し直しました。それはaminの大事な曲なので、今回のアルバムにもぜひ入れたかった。
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これからどういう歌手を目指しますか?
■amin:
常に素直に。周囲の思っているとおりの姿でいるのも辛いので、本当の自分を見せたい。こういう一面もあるよね、とか。新たな一面も生まれるかもしれないし。常に自分に正直でいたいな。そのときの自分をそのまま出して。守りに入りたくはない。“癒し系”のイメージでいないとならない、というのは、自分じゃないと思う。今回のアルバムは、こういう面もあって、ああいう面もあって、だから、これがaminなんですよといえる内容になった。最初に聴いたときは、CMのイメージと違う面もあってびっくりするかもしれないけど、私の足跡を知ってもらえば、きっと分かってもらえる。
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上海で活動する予定は?
■amin:
故郷にお返しをしたいと思っています。歌手を目指す若い人たちにいい影響を与えられたら。上海でもこのアルバムを出したいし、コンサートもやりたい。一昨年以来なので。上海交響楽団と日本のミュージシャンと一緒に。日本と上海の橋になりたい。夢を見て。
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ところで、aminという名前は本名?
■amin:
ニックネーム。本名は、巫慧敏(ウー・ホエィミン)。中国の南方では名前の最後にミンがつくと、「アミン」という愛称になるんです。北方にいくと重ねる。パンダの名前が「ホアンホアン」などというのと同じで「ミンミン」になる。「ミンちゃん」って呼ぶのと同じです。
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後記
朗らかな女性。夢を信じているという言葉を非常に力強く語り、印象に残った。ウーロン茶のCMでは、その柔らかい歌声で、“癒し”の歌い手というイメージを広げたが、もっと力強いものをもち、音楽で表現して行くに違いない。
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