東京宝塚劇場(東京・日比谷)の星組公演「愛するには短すぎる」「ネオ・ダンディズム!」が12日に千秋楽を迎え、トップスターの湖月わたるが18年の宝塚生活に別れを告げた。劇場前には約8000人のファンが駆けつけ「一生忘れない」と別れの言葉をかけた。
退団会見では「女優はピンとこない。大学に進学したい」と退団後の進路について打ち明けたが、「東京公演の初日の幕が開いてからは、今まで培ったものを急に止めることはできない」と考え直し、大学進学を目指しながら舞台生活を続けたい意向を明言した。
この日は、公演終了後に約30分のサヨナラショーが行われた。男臭い「荒波の唄〜大漁ソーラン」(「ミレニアム・シャレンジャー」=2000年)で幕を開け、続く「カリビアン・ナイト」(「タカラヅカ絢爛」=2004年)では客席にまで降り「さあ、踊りましょう」と観客を鼓舞。
「アリベデルチ・ローマ」(「ロマンチカ宝塚04」=2004年)では、白いタキシードの湖月と真っ赤なドレスの娘役トップ、白羽ゆりが優雅なデュエットダンスを披露。「月の満ちる頃」(「王家に捧ぐ歌」=2003年)ではアイーダにふんした後任トップスター、安蘭けいとともに銀橋で熱唱。
「出会い(すみれボレロ)」(「ソウル・オブ・シバ」=2005年韓国公演)で黒エンビ姿で大階段から下りてきて、そのままスポットライトを浴びて「世界に求む」(「王家に捧ぐ歌」=2003年)を独唱。客席でペンライトが揺れた。ペンライトにはきょうの日付と作品名が記されていた。歌が組子らに引き継がれる中、ゆっくりと舞台を歩き、幕が下りた。
続いて退団者らのあいさつ。組長の英真なおきに「わたる」と呼ばれると「ハイッ」と答え、歌劇団の正装でる緑のはかま姿でゆっくりと大階段を下りてきた。組から白羽が同期代表で退団した
伊織直加(=現在は伊央里直加)が、それぞれ花束を渡した。
湖月は「大好きなこの舞台、仲間たち、そして男役に別れを告げるときがきました」と話し始めた。「この退団公演は思っていた以上に寂しく、けれど、たくさんの幸福を与えていただきました。心からありがとうございました」と客席に向かって深々と頭を下げた。
また、星組の仲間たちには「相手役の(13日付で雪組に異動する)
白羽ゆりは星組で得た宝物を胸に新たな日々をかんばってほしい。愛する星組は安蘭を中心にひとりひとりがますます輝くものと信じています」との言葉を贈った。
そして全員で「フォーエバー! タカラヅカ」を歌い、幕は下りた。6回の緞帳(どんちょう)あげ、さらに2回の「わたるコール」が続いた。
その後、劇場2階で記者会見(
※会見の一問一答はこちら)。ことし2月14日に大阪市内で行われた退団公演では「大学進学を目指す」と語り、退団後の芸能活動は視野にないとしていたが、進学のための勉強と並行して舞台活動を続けたい意向を明らかにした。
湖月は「大阪で会見した際は、男役の自分という存在があまりに大きく、また退団の舞台に追われて宝塚以外の舞台に立つことについて実感がわかなかった。ところが、東京公演の初日の幕が上がり、これで私を待っている舞台がなくなるのだと思ったとき、それを寂しく感じ、さらに舞台に立ちたいと考えている自分がいました。今まで培ってきたことを急に止めていいのか。今やめたらどうなるのだろうと考えながら東京の舞台を踏んでいました。勉強をしながら舞台に立てるのではないかと、そんなぜいたくなことを考えながら東京公演を過ごしました」と心境の変化を説明。すでに退団後の仕事のオファーがあるとも明かした。
サヨナラショーも会見中も始終さわやかな笑顔。実は開演前に涙は枯れてしまったのだという。「朝、ファンのみなさまに見送られて楽屋入り、組のみんなに迎えられてひと泣き。開演前に退団者全員であいさつした際にふた泣き。開演前に泣かせていただきました」。ただ、サヨナラショーの客席でペンライトがたくさん振られるのを見てときには「さすがに涙が浮かんでいたと思います。『フォーエバー! タカラヅカ』をうたい終わったときは涙があふれ出そうでした」。
そして午後8時ごろ、木枯らしが吹く劇場前をパレード。「わたるさんのこと、一生忘れません。幸せになってね」とファンらが一斉に声をかけると笑顔で手を振ってこたえ、迎えの車に乗り込んで18年の男役生活に終止符を打った。
この日は客席に小泉純一郎前首相、森喜朗元首相、宝塚OGの扇千景参院議員の姿もあった。
星組はこの日、湖月のほかに柚乃玲花、羽鷺つばさ、湖咲ひより、真白ふあり、涼麻とも、大真みらん、青空弥ひろ、高央りお、しのぶ紫も退団した。
※パレード写真グラフは制作中です