|
宙組「炎にくちづけを」「ネオ・ヴォヤージュ」宝塚大劇場公演評
|
| | |
“オペラの宝塚版” 定着
|
| | |
宙組公演「炎にくちづけを」はヴェルディのオペラ「イル・トロヴァトーレ」をもとに描く、愛と復讐(ふくしゅう)の物語。15世紀のスペインを舞台に、吟遊詩人のジプシー、マンリーコ(和央ようか)、宮殿の女官レオノーラ(花總まり)、ルーナ伯爵(初風緑=専科)の恋の三角関係を中心に、マンリーコの生い立ちの秘密を知るジプシーの母親アズチューナ(一樹千尋=専科)がからんで、残酷で悲劇的な結末へと突っ走っていく。
木村信司(脚本・演出)と甲斐正人(作曲・編曲)のコンビによる“オペラの宝塚版”も3作目となり、かなり手なれてきた。歌を中心につづるオペラは、もともと筋書きが分かりづらいが、伯爵の家臣やジプシーたちの歌で背景をうまく説明。話の展開や舞台転換もスムーズだ。
和央の迫力、花總の涼やかさ、初風のうまさ、一樹の強烈なインパクトと、主要キャストの歌唱力もそろい、見ごたえのある力作ではある。ただ、その4人以外の見せ場は少ないし、この作品の真のテーマ、差別と宗教を声高に表現し過ぎたきらいも。宝塚の作品としては是非が分かれるところだろう。
虐げられているジプシーたちが「俺たちはジーザスが嫌いじゃない」と歌いながら次々に殺される場面、キリストの処刑を思わせるラストシーンには、言葉もなく息をのむ。19世紀半ばに初演された15世紀の物語の状況が、21世紀の現在でもいかに変わっていないかに、ア然とさせられた。
ショー「ネオ・ヴォヤージュ」(三木章雄作・演出)は、凍てついた海に閉じ込められていた幽霊船の海賊たちが、永遠の愛を歌うセイレーンの歌声で蘇り、時空を超えた夢の旅を展開するバラエティーにとんだ作品。タップダンスを多用するシカゴやニューヨークの場面が印象的だ。この公演を最後に退団する初風が、パレードのファイナル・シンガーをつとめている。
|
| | | | | | | (C)2005.The Sankei Shimbun All rights reserved. |
|