−−高校時代は少女漫画を描いていましたね。なぜギャグ路線に変更を。
倉田 私の画力では長いストーリーは無理だということに自分で気がついた。長距離の選手が短距離の方が向いていると気付いて変更するのと似たようなものです。確かに少女漫画ではプロにはなれなかったと思いますよ。
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漫画家・倉田真由美さん=東京都千代田区大手町・東京産経本社(撮影・瀧誠四郎) |
−−ジャンルによって資質も違うのですか。
倉田 そうですね。私は自分を生かせる場所を探し出せた。それは自分で見つけるしかない。こればかりは、どんなに良い親でも見つけられません。
《高校時代は漫画に没頭した。だが、「中学で猛勉強した余力」で一橋大学に合格する》
−−大学時代も漫画を描いていた?
倉田 大学時代は1本描いただけなんです。サッカー部のマネジャーをしていて、片思いのキャプテンにうつつをぬかしていましたから。でも思い切りふられました。どうやって告白したかも覚えていません。ただ、私が彼を好きだと、皆が知っていた。それぐらいしつこく何度もアプローチしていました。誕生日にプレゼントをあげたり、ケーキを焼いたり、お弁当を作ったり。いろいろしましたね。
−−でも、かなわなかった。
倉田 結局、そういう重いアプローチでは全然駄目でしたね。その失恋は勉強になりましたよね、すごく。
−−どんな勉強に。
倉田 相手が何を望んでいるかを考えないで「こんなケーキが焼けるの」などと自分が見せたいことを優先してアプローチしては駄目だということ(笑)。
−−わかります。
倉田 それは相手の理想ではないんだよね。極端なことを言うと、例えば、男から、自分がすごくかっこよく撮れている写真をもらうようなものですよね。もしかしたら、ケーキなんか大嫌いかもしれないのに、ケーキを焼ける私にうっとりしているわけですよね。あと、お守りもあげましたよ。彼の体調を気にしていると演出したかったの。ほれていない女から、なんとか神社みたいな、渋いお守りが届くんだよ。うれしくないですよ。
−−確かに。
倉田 子供のころ、そうやって間違っちゃうよね。大学生になっても気づかなかった。でも幸いなことに年齢を重ねると、合わない男がわかってくる。だからお互いに望んでいるものがずれなくなってきます。仕事選びと似ていますね。
−−どんな共通点?
倉田 自分にとって何が大事で、何が大事ではないかを考えて会社選びをしないと失敗するということですよね。
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