「タイタニック」スリルとロマンスのあふれ切った大巨編
この記事は産経新聞97年11月18日の夕刊に掲載されました。
初めて見た人は、すごいショック。これが実話で、1912年4月10日、この豪華巨船「タイタニック」号が2223人を乗せ、イギリスのサウサンプトンからニューヨークへ向かう洋上で氷山にぶつかって沈む。なんたる怖い映画と目が釣り上がった人を見た。映画、近ごろ、手の込んだトリックで恐竜や噴火を見せたが、『タイタニック』は実話。それが見る人の目と胸をえぐる。
しかし、この映画、タイタニック号の恐怖とプラスして、レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットの、三等船客の貧しい画家と一等船客の富豪のご令嬢、この若き2人の恋に5割を費やし、怖い映画、同時に涙のロマン映画。この両面に手を回し過ぎたきらいが出た。けれども、初めてタイタニック号の悲劇を見る人には、このロマンスがまた満足であろう。要するに、観客に100パーセント奉仕した大作となっている。
タイタニックとはギリシャの巨神タイタニックからつけられた船名。世界最強、沈むわけなしの自信が、洋上の氷山にぶつかってからのあび叫喚。これがすごい。これが「事実」ということで胸をしめつける。映画にして初めてその恐怖を見せうるという性格ゆえに、映画化されること5回を数える。特にイギリスの『S・O・Sタイタニック』(56年)は、ドキュメント性あふれ、今もオールドファンの胸に染み込んでいることだろう。
今回は、ジェームズ・キャメロン監督。沈みゆく巨船タイタニックの恐怖はさすがに実感あふれさせたが、1517人が命を失ったという悲劇が盛り上がらなかった。ただし、映画初めの音楽がいかにも悲しく、画面がまたセピア色一色。その悲しいニュース的シーンから始まったことで、この監督の心掛けの優しさ、厳しさを知る。
しかし、この映画、最も受けるのはディカプリオ(23)が『ロミオ&ジュリエット』(96年)のときよりすっかり男の色気を感じさせる大人になっている魅力。これかもしれんぞ。
(映画評論家)
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平成2年から10年まで産経新聞に掲載された連載の再録です。
タイタニック
監督・脚本:
ジェームズ・キャメロン
製作:
ジェームズ・キャメロン
ジョン・ランドー
製作総指揮:
レイ・サンキーニ
撮影:
ラッセル・カーペンター
特殊視覚効果:
デジタル・ドメイン
編集:
コンラッド・バフ
ジェームズ・キャメロン
リチャード・A・ハリス
音楽:
ジェームズ・ホーナー
美術:
ピーター・ラモント
衣装:
デボラ・L・スコット
出演:
レオナルド・ディカプリオ
ケイト・ウィンスレット
ビリー・ゼーン
キャシー・ベイツ
フランシス・フィッシャー
ビル・パクストン
バーナード・ヒル
ジョナサン・ハイド
ビクター・ガーバー
デビッド・ワーナー
ダニー・ヌッチ
グロリア・スチュアート
スージー・エイミス
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