「彼女は最高」ここにやっとアメリカ映画を見た
この記事は産経新聞97年2月4日の夕刊に掲載されました。
最近のアメリカ映画はウエスタンも失って車とガンプレイ。頭にくる。ところがこの一九九六年作アメリカ映画一時間三十六分、カラー。原名「she's the one」。題名は“女の映画”みたい。
中身は“男の映画”。あの「マクマレン兄弟」のエドワード・バーンズのこれも製作主演監督作。この監督、今年二十九歳。父はニューヨークのポリスだった。さよう、まさにアイルランド系。
映画は現代。兄はタクシーの運転手(エドワード・バーンズ)、弟はウォール街のさる会社の腕利き。会社から高級車をあてがわれている。この弟(マイク・マックグローン)、ハンサムで肉体美。だから細君の前でいつも裸になる。ところが妻(ジェニファー・アニストン)は夫と三カ月もアレがないのでヒステリー。夫にあんたホモなのと詰め寄る。
実はこの弟、一人の女とできている。その女、こともあろうに兄のかつての彼女。今の兄の妻(マクシーヌ・バーンズ)は勉強一点張りでパリに留学したいと夫をそそのかす。この兄弟、言い争って親父(ジョン・マホーニー)に訴える。親父、消防夫を引退、年金でのんき生活。息子二人のけんかを見つめて、よしここで拳闘しろと家の前に二人を立たせる。
こう物語るとばかみたいなストーリーながら、この映画、この男の映画、男のセックス、男の
不倫、それらを描く。
今や映画の時代がニューヨークの二人女からニューヨークの二人男へと変わってきた。タクシーの運転手の兄が知る車の客のホモ、セックスレス、不倫、スピード結婚、これらがこの兄弟映画の中にも語られて、映画中にペニスや女房のためのセックス道具までも語られて、前作「マクマレン兄弟」より遥かに現実的。
しかしいかにもアイリッシュらしいこの兄弟映画には古き懐かしのアメリカ映画、そのサイレント・フィルムの香りを嗅ぐ。この映画、近ごろのビックリ脅しのトリック映画よりなんぼかホンモノ。この映画の製作総指揮はロバート・レッドフォードだった。
(映画評論家)
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平成2年から10年まで産経新聞に掲載された連載の再録です。
彼女は最高
監督・脚本:
エドワード・バーンズ
製作総指揮:
ロバート・レッドフォード
マイケル・ノジック
製作:
テッド・ホープ
ジェイムス・シェイマス
エドワード・バーンズ
撮影:
フランク・プリンジ
編集:
スーザン・グレイフ
衣装:
スーザン・ライオール
音楽:
トム・ペティ
出演:
エドワード・バーンズ
マイク・マックグローン
マクシーヌ・バーンズ
ジョン・マホーニー
キャメロン・ディアス
マイク・マックグローン
アマンダ・ピート
レスリー・マン
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