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淀川長治の銀幕旅行
「ロミオ+ジュリエット」ガラスの色きらめく万華鏡
この記事は産経新聞97年2月25日の夕刊に掲載されました。
このシェークスピア、何度映画化されたことか。ロミオとジュリエット、そのバルコニーのところでジュリエット泣いて“そなたのててごがそなたのててごでなかりせば、いかによかったであろうのに”。

今ここに見るレオナルド・ディカプリオのロミオ。あの「ギルバート・グレイプ」のあの彼が今や映画大作のロミオに! もうこれで若きファンは狂喜した。狂喜は狂気であったかもしれぬ。

かくてジュリエットを「若草物語」で三女にふんしたクレア・デーンズが演じ、さてそのバルコニーの涙のシーンがいかにあいなったか。二人は抱き合い、目の前のモダン庭園のプールにざんぶともつれて飛び込み、水中で接吻した。

この映画すべてがモダン化、というよりもミュージカルの舞台化。歌わないミュージカル的舞台と言ったならおわかりか。ロミオの父は私の愛するブライアン・デネヒー。ただし、あっと出てあっと消えちまう。ジュリエットの父はポール・ソルビノ、召し使いはミリアム・マーゴイルズ、ティボルトはジョン・レグイザモとメニューはそろっているが、このクラシックのお料理はサパッと消えて、ロックでもがなるがごとき明るさ。

ところがこの題名「ロミオ+(&)ジュリエット」、この+の字、実は十字架、教会の十字架。この映画、ロミオがジュリエットの死体にかしずく涙のシーンにこの十字架がネオンで一本二本三本四本五本と並び、ロウソク百本千本あたかも豪華ミュージカルの幕をおろす最後の晴れ舞台さながらの「ロミオ+ジュリエット」。

この映画の監督バズ・ラーマン、「ダンシング・ヒーロー」があった。オーストラリアの監督。オーストラリアはときどきビックリさせる。キャメラが、ガラスの筒をキラキラ回すと赤に緑に黄に紫ときらめく万華鏡そのままのスタイル。「ミセス・ダウト」のキャメラマン。いまさらまともにロミオとジュリエットなんて作られまへんわ、そう笑って転げ回ってから、半分マジで野心いっぱいに作っている一見お薦めのお楽しみ。



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故淀川長治さん

平成2年から10年まで産経新聞に掲載された連載の再録です。

ロミオ+ジュリエット

監督
バズ・ラーマン

脚本
クレイグ・ピアース
バズ・ラーマン

原作
ウィリアム・シェイクスピア

製作
ガブリエラ・マルティネリ
バズ・ラーマン

撮影
ドナルド・M・マカルパイン

編集
ジル・ビルコック

衣装
キム・バレット

音楽
ネリー・フーパー
クレイグ・アームストロング
マリアス・デ・ブリーズ


出演

レオナルド・ディカプリオ

クレア・デーンズ

ブライアン・デネヒー

ポール・ソルビノ

ミリアム・マーゴイルズ

ジョン・レグイザモ

ポール・ラッド

ジェシー・ブラッドフォード

ハロルド・ペリノー

ダッシュ・ミホーク

ダイアン・ヴェノーラ

ジェイミー・ケネディ

ザック・オース

ビンセント・ラレスカ