「百貨店大百科」パリのデパート店員の群集型コメディー
この記事は産経新聞97年8月5日の夕刊に掲載されました。
「ヒャッカテンって何や?」という若いのがいる。デパートのことくらい分からんのかといいたい。今年36歳のセドリック・クラピッシュ監督の30歳のときの第一回作品。順番にいうと、(1)『百貨店−』(2)『青春が行方不明(仮題)』(3)『猫が行方不明』(4)『家族の気分』。このうち、(3)が封切り済みで好評。年齢からいうと(1)30歳(2)31歳(3)34歳(4)35歳。
よほど映画好きとみえて、ワクワクとこの第一作は作っている。デパートの店員のセールスとその訓練。デパートは本物を使っていて、その1階、2階、3階、4階と各階がカメラでとらえられ、群れる大入りの客にサービスのつもりか、3階あたりのところでは、2人の男が民族舞踊を民族衣装で踊っているのだが、同じリズムで同じステップで踊り続けている。
この映画、原題は「リアン・デュ・トゥ(なんでもありません)」。この若い監督、パリのマラソンやバンジー・ジャンプの本物をカメラで撮って、ちゃっかりと映画の中に加えている。デパートの店員の訓練としてマラソンもやらせれば、見上げるばかりの高所からのロープつきの命がけの飛び降りのバンジー・ジャンプもやらせる。要するにデパートが火災のときの訓練か。
というわけで、デパートのドキュメント気取りのしゃれたつもりの映画ながら、見ていてその映画、幼さにハラハラするばかり。
しかし、その幼さ、つまり若さ、そこがこの映画のおもしろさと申し上げたい。セールスの営業会議もあれば、ファッションショーもあり、仮装大会もありで、デパートの店員のすべてを映画に収めたグランドホテル型映画。そのラストは、店員50人のコーラスで終わる。
あか抜けしないが、あか抜けしているつもりの若い監督のおしゃれ映画。この監督、パリ生まれ。ニューヨーク映画大学をへて撮影のライト係に。出演者は、ファブリス・ルキーニ、ジャン=ピエール・ダルッサンほか。監督自身もビデオ売り場の客として出演というお楽しみ映画。
(映画評論家)
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平成2年から10年まで産経新聞に掲載された連載の再録です。
百貨店大百科
監督・脚本:
セドリック・クラピッシュ
脚色:
ベロワイエ
セドリック・クラピッシュ
製作:
アドリーヌ・ルカリエ
撮影:
ドミニク・コラン
編集:
フランシーヌ・サンベール
音楽:
ジェフ・コーエン
美術:
フランソワ・ルノー=ラバルト
衣装:
エヴ=マリー・アルノー
出演:
ファブリス・ルキーニ
ジャン=ピエール・ダルッサン
ピエール=オリヴィエ・モルナス
ナタリー・リシャール
オリヴィエ・ブローシュ
マイテ・ナイール
マルク・ベルナン
エリザベート・マコッコ
ダニエル・ベルリウー
オデット・ロール
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