「青春シンドローム」クラピッシュ監督が描く青春群像
この記事は産経新聞97年9月9日の夕刊に掲載されました。
シンドロームとは「悪い兆候」。ご存じセドリック・クラピッシュ監督の作品。順番に挙げていくと『百貨店大百科』(1992年)、『青春シンドローム』(94年)、『猫が行方不明』(95年)、『家族の気分』(96年)となる。まだ子どもっぽい監督作品『百貨店−』から、じっくりと映画と対決のこの2作目、すっかり大人になった。
見つめるとイギリスの、イタリアの青春群像みたい。いうならばこの監督、フランスヌーベルバーグ型。男の若者五人を描く。トマジ、モモ、シャベール、ブリュノ、レオン。
原題「ル・ベリル・ジューヌ」。これ、「若い災い」。なるほど、この原題でハッキリした。思いなしか、「トレインスポッティング」とだぶる。しかし、あれほど汚くない。若いのがパパになって、生まれてきた赤ん坊の動くのを見つめる。その青春の足跡が映画を染めてゆく。
若者の思い出の高校の、その教室が登場するが、アメリカ映画のかつての『暴力教室』とはその描き方がまったく違って、この映画は生徒の目をもって見せてゆく。
随分と乱暴でちっとも勉強する様子がなく、ヤクを吸ったりして、こいつらは日本の若い客の目の毒だが、とにかく何でも見せてゆく。汚い若者たちの集まりの、それもセックスをのぞき見るでもなく、やりたきゃやれよ、みたいな悪童たちの生態がおもしろい。
この監督の『猫が行方不明』や『百貨店−』と大違い。フランスの、意気のいいとも言えぬが、ともかくむき出しのハダカの青春の男たちを見せてびっくりさせる。
クラピッシュ監督作品。こう続けて見せてくれると、この監督にいつの間にか親しさがわき、この映画にも拍手したくなる。今年36歳。まだ若い。今にフランスの注目の大物になりそう。
主役のトマジにふんするロマン・デュリスは、町で拾ってきたシロウト。フランス人は、素人でもうまいもんだ。しかし、これ、クラピッシュの演出力。この監督どうやら、この映画の5人の男の子にほれきっているみたい。
フランス映画。1時間46分。
(映画評論家)
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平成2年から10年まで産経新聞に掲載された連載の再録です。
青春シンドローム
監督:
セドリック・クラピッシュ
脚本:
セドリック・クラピッシュ
サンチアゴ・アミゴレナ
アレクシス・ガルモ
ダニエル・シユー
製作:
アイッサ・ジャブリ
ファリド・ラウアサ
撮影:
ドミニク・コラン
編集:
フランシーヌ・サンベール
音楽:
テン・イヤーズ・アフター
ジャニス・ジョプリン
ジミ・ヘンドリックス
ステッペンウルフ
バルバラ etc.
美術:
フランソワ・エマニュエリ
衣装:
ピエール・イヴ・ゲイロー
出演:
ロマン・デュリス
ヴァンサン・エルバズ
ニコラ・コレツキー
ジュリアン・ランブロシニ
ジョアキム・ロンバール
リザ・フォークナー
エロディー・ブーシェ
ジュリー・アンヌ・ロート
エレーヌ・ド・フジュロル
カロリーヌ・ダミアン
ジャック・マルシャン
ナタリー・クレブ
フランソワ・トゥマルキヌ
アラン・ギヨ
エレーヌ・メディグ
アラン・ジャリージュ
ジャッキー・ベロワイエ
セドリック・クラピッシュ
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