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淀川長治の銀幕旅行
「太陽の少年」ザクロを踏みにじったごとき青春像
この記事は産経新聞97年4月8日の夕刊に掲載されました。
1995年、中国・香港2時間8分。原題は「太陽がキラキラしていた時代」。監督・脚本チアン・ウェンは「芙蓉鎮」「紅いコーリャン」に出ていた俳優で、これが監督第一作。日本のつけた題名からは、赤い旗を風になびかせた軍国少年を想像させるが、これはジェームス・ディーンの青春映画を思わせるごとき映画感覚あふれた、ザクロを踏みにじったごとき青春映画だった。

悪ガキ少年がやがて16歳。自転車乗り回し、学生仲間のミーラン(ニン・チン)を恋するが彼女にもばかにされ、映画のラストはプールの飛び込み台の最上階から飛び降りて、彼女と自分たちの仲間を驚かそうとした。

というとこの映画、ありきたりの青春物と思われようが、この監督の映画精神がこの映画をまさに第一級ものにした。ぐんぐんと映画は盛り上がり、このキャメラ、このフィルム編集が映画の歌をうたうのだった。つまり見事なフィルムの流れの中に出演者を流し込み、久しぶりの本物の“映画”の充実感をあふれさせたのだった。

悪ガキがそのまま16歳を迎え、今もその根性で仲間からもガールフレンドからも嫌がられるこの傷だらけの青春像に、この主演者(シア・ユイ)の個性的マスクがぴったりで、しかも演技が見事。中国映画をともすれば衣装とその生活ぶりを見ることで楽しんでいたが、この映画は世界各国のベストワン級の映画演出の粘りをみせた力作だった。

 (映画評論家)



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故淀川長治さん

平成2年から10年まで産経新聞に掲載された連載の再録です。

太陽の少年

監督・脚本
チアン・ウェン(姜文)

原作
ワン・シュオ

製作
ウェン・チュン
リウ・シアオチン

撮影
クー・チャンウェイ

編集
チョウ・イン

美術
チェン・ハオチョン
リー・ヨンシン

音楽
クオ・ウェンチン

出演

ニン・チン

シア・ユイ

チアン・ウェン

コン・ラー

シャン・ナン

タイ・シャオポー

ワン・ハイ

タオ・ホン

ヤオ・アルカー

ワン・シュオ