「インデペンデンス・デイ」
この記事は産経新聞96年11月5日の夕刊に掲載されました。
目にモノ見せる。アメリカのびっくり映画はまさにこれ。ばからしい。しかし子供の“目”になると結構おもしろい。
題名はアメリカ独立記念日をさす。7月2日から“びっくり”が世界を襲って、7月4日にアメリカがこれを“退治”するちゅうハナシ。UFO(空から襲う奇怪なる円盤)、すでにこれは「未知との遭遇」その他もろもろのアメリカ映画で見慣れてはいるが、今回の円盤は“でっかいぞ!”が見もの。これが襲ってくるトリックが“活動写真”の威力を見せる。
その円盤たるや東京がまるっきり収まるくらい。おおげさだが、まあそんなユーホーがやってくる。ロサンゼルスは大騒ぎ、ニューヨークも狂乱。そのさまがこの映画のまさに“見もの”。空には雲を巻き起こし、その火をはく雲が大都市を襲う。漫画と違って、これは本物そのもので“目にモノ見せる”からおもしろい。
おもしろいと言っちゃ申し訳ない。手に汗握る恐怖。銀座から品川どころか横浜までがこの宇宙の円盤で真っ暗になり、“光”の雨が地上に一大火災を巻き起こす。逃げ惑う人たち。そこに、そのすぐ後ろに、見上げる火炎の雲が襲いくる。アビキョウカンだ。
アメリカ映画はゼニをもうけるためなら何でもやってみせる、そのゴールドラッシュ精神がここにあふれ、これを見るこちらはあきれてその根性を楽しんで“目”で見とれきればよい。監督は「スターゲイト」(1994)のローランド・エメリッヒ。脚本は映画のためのオリジナル。
映画にはアメリカ大統領(ビル・プルマン)はじめいろいろと出てくるが、スターで見せる映画ではない。ウィル・スミスという黒人兵がデンゼル・ワシントンみたいに勇ましくご愛きょう。とにかくトリックそしてキャメラ(カール・ウォルター・リンデンラウブ)で見られるがよい。2時間25分、ハイ、見せきられる。
最初にアメリカ国旗のあの月面上陸のシーンが出てきたりして、それにこの題名といいアメリカでは大受けだ。
(映画評論家)