「フリッパー」「海」でおなじみのものがたり
この記事は産経新聞96年7月9日の夕刊に掲載されました。
ご家族向け映画。夏の日の休日に涼しい映画館でこの映画をご家族そろってごらんなさい。海とイルカと少年のかわいい映画。そのイルカの名(フリッパー)がこの映画の題名。1964年に同じ少年の名サンディ、同じフリッパーという名のイルカで楽しんだその種の映画の新スタイル。1996年カラー、1時間36分。
イルカがとても賢いことはアメリカ映画が何度も見せてくれてびっくりした。大統領暗殺のために協力させられたイルカ活躍映画もあった。今度のイルカと少年の映画はかわいい物語。お母さんの頼みで風変わりの伯父(ポール・ホーガン)の家にひと夏を預けられたサンディ少年(イライジャ・ウッド)。本当はコンサートを聞きに行きたかったシカゴの都会少年が、南フロリダの船着き場にただ一人ボロボロガタガタの家に住んでいるジジィに近い老人のもとに預けられる。
お話は見ていただきましょう。イルカと少年がどうして仲良しになったのか、イルカがどのような芸当を見せるのかも、この映画で見てもらいましょう。都会のクーラーのきいた映画館でフロリダの南の海の風景を見て、フリッパーが海から顔を出してクークーッと人を呼んだりするのを見たり、ものすごく勢いよく跳びはねたりするのをカラー映画の画面いっぱいに見るのも真夏のお楽しみ。
それよりもフロリダの南の海、そしてそこの海と船の人、そして目の前がもうすぐ海なのに木造の家があるなど、日本の都会人はそんなことも楽しんで、遠く近くイルカがたくさんはねる海の風景に見とれるのも楽しみでしょうが、映画ファンはサンディが「8月のメモワール」、古くは「わが心のボルチモア」のイライジャ少年であることと、風変わりの伯父があのオーストラリア映画の「クロコダイル・ダンディー」のポール・ホーガンが演じていることで、目が画面に食いつくことでしょう。
監督がアラン・シャピロ。脚本も彼。新味はないけれど、フリッパーがそれを助けてくれるでありましょう。ジョーズがチラッと出てくるおまけはちょいと顔負け。撮影ビル・バトラーは「ジョーズ」のキャメラマンでありましたぞ。8月上旬、全国公開。
(映画評論家)