「エビータ」
この記事は産経新聞96年12月24日の夕刊に掲載されました。
もう日本でもよく知られたミュージカル「エビータ」。素晴らしい歌が洪水さながらにあふれ、聞き惚れる。これをマドンナが演じる、この映画のミュージカル。マドンナで8割の、いや9割90パーセントの(うわさ)(心配)(すてき)(見てやろう)(聞いてやろう)(エロティックよ、きっと)のすべてを含んでこの映画、マドンナで勝負した。
さてそのマドンナは多少老けてはきたが、“歌”は見事。この本人が歌っているのか、ほんとかと聞き惚れるばかり。歌はすべて美しく涙あふれる始末。
ところでこの映画、監督のアラン・パーカーで生きた。アメリカ映画はここ何年、歌を忘れた。というよりも歌う映画にしりごみした。この映画、何年ぶりであろう。アメリカ映画に“歌”がよみがえった。貧しい女のエビータの出世ぶりを説明する役のアントニオ・バンデラスの歌いっぷりもミュージカルの呼吸。
ただし日本人の私の見た目、知った目には、アルゼンチンの大統領夫人に収まる“女”のその力が実に簡単であきれるばかりだが、「エビータ」はこの彼女がアルゼンチンの市民こぞっての救世主になるその“熱”をエビータともども映画にあふれさせる。彼女がカラダ一本で男を次々と負かしていったかは美しく笑わせぼかして、ただもうマドンナに歌わせ、ときに美しくダンスを披露させた。
しかしこのすべての功績こそは監督のアラン・パーカーにある。この映画の歯切れの良さ。映画の流れというより音楽に乗るこの編集のタイミング。かつての名作「ダウンタウン物語」、そしていよいよ本格名作「フェーム」、この二作のミュージカルのスピードとリズム、これが「エビータ」に生きた。「エビータ」はアラン・パーカーの映画の代表作となるはもちろん、アメリカ映画のミュージカルは死なず、ここにアラン・パーカーありの誇りを見せた。
ニューヨークの舞台でこれを2度見たが、2度ともアクビした。ストーリーがよくわからなかったからよ。今度はいいよ、よくわかったよ。パーカー万歳!
(映画評論家)
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平成2年から10年まで産経新聞に掲載された連載の再録です。
エビータ
監督:
アラン・パーカー
製作:
ロバート・スティグウッド
アラン・パーカー
アンドリュー・G・ヴァイナ
脚本:
アラン・パーカー
オリバー・ストーン
音楽:
アンドリュー・ロイド・ウェバー
作詞:
ティム・ライス
衣装:
ペニーローズ
撮影:
ダリウス・コンジ
編集:
ゲリー・ハンブリング
出演:
マドンナ
アントニオ・バンデラス
ジョナサン・プライス
ジミー・ネイル
ヴィクトリア・サス
ジュリアン・リットマン
オルガ・メレディス
ローラ・パラス
ジュリア・ウォスリー
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