「アンカーウーマン」この顔2人揃うと、やっぱり花
この記事は産経新聞96年04月16日の夕刊に掲載されました。
アンカーウーマンとはテレビのニュースキャスターのような、その人気花形のごとき女アナウンサーのこと。これは日本での題名。原題は「アップ・クローズ・アンド・パーソナル」、もっとアップに身近に迫れとか最後を締める人といった意味。
地方からアンカーウーマンにあこがれてきた娘(ミシェル・ファイファー)がやっと願いかなってマイアミの放送局に採用される。ところがこの地方局に、腕利きのアンカーマン(ロバート・レッドフォード)が何かの事件の失敗で回されてきていた。その彼が彼女をリードし、次第にプロにさせ、やがて本場のフィラデルフィアに昇進させてゆくその間に、2人の間にロマンスが生まれるといったハリウッド・スタイル映画。
2時間5分。ことし(1996)の作品。アメリカ目下上映中。その興行は全作品中でのベスト・ワン。監督が「フライド・グリーン・トマト」のジョン・アブネット。そして人気スター2人に「スモーク」のストッカード・チャニング共演というサービス。これならファンは嫌でも駆けつけるであろう。
見ていると、ユタで映画学校をやっているレッドフォードがファイファーとべったりとラブ・シーン。これでレッドフォードがテレているそこが面白く、それよりも一番の興味はアメリカのテレビ局でのアンカーウーマンというその仕事ぶりをこの目で見ることのテレビ興味。それにハッタリ映画を作るのに忙しいアメリカの近ごろの巨匠監督たちと違って、監督が地味なジョン・アブネットだけに、ヤマとかタニとかのクライマックスがない。
映画中に刑務所の大火災あり、ここにアンカーウーマンの腕どころを見せるとはいえ、この映画の目的の99%はこの2人の花形共演。すこし老けましたとはいえ、「スティング」の彼と「恋のゆくえ」でピアノの上に寝そべってジャズ・ソングの『フゥ』を歌ったあでやかな彼女との共演。これで客が来なきゃオシマイヨという話題作。
(映画評論家)