「コンゴ」白猿・黒猿の対決
この記事は産経新聞95年10月24日の夕刊に掲載されました。
これは1995年作・パラマウント映画、1時間49分。コンゴカカルメイガワミタクナイと申したい珍名画。
大正7年(1918)に「ターザン」第一号エルモ・リンカーン主演、これを見たとき、ターザンを取り巻く数匹の猿これすべてヌイグルミを当時九歳の私ですらケッタイナお猿と笑ってしまった。あれからはるか77年の経過をもって、ここに巨猿合戦「コンゴ」。見るからにそのお猿、ほんものそっくり。
話はアフリカ・ザイール、ここに未開のダイヤ鉱山ありというのでこれに探検隊が繰り出すのだが、驚いたことにこのダイヤ鉱山を守っているゴリラ、これがグレー・ゴリラと呼ばれる全身灰色の毛の巨猿。と申してもキング・コングに非ず、いわゆるあのよく見るゴリラのでっかい種類。
この映画のお楽しみは噴火、熔岩、火炎の流れに非ず、白猿黒猿の対決。しかもこのヌイグルミの人間の演じるお猿のたくみ(ゝゝゝ)。見どころはここ。お話はばからしくてハナシにもならぬのだが、この原作がマイケル・クライトンと知って、これで客をひきつけるのだと知る。この原作者、なにしろあの「ジュラシック・パーク」、それに「アンドロメダ」の小説家。
監督フランク・マーシャル、この人は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」「インディ・ジョーンズ」3部作、このプロデューサー。音楽がジェリー・ゴールドスミス。
かくなるや誰もがスケールの偉大さに想像はふくらむであろうが、なぁに驚かされるのは人間が演じたるゴリラ、その動きその表情。このお猿、ことしのアカデミー賞をいただくかも。
さて人間の出演はディラン・ウォルシュ、ローラ・リニー、アーニー・ハドソン、これみんなゴリラの名演に食われてしまったるまさに珍画珍演。ゴリラの白昼の決闘。
これがパラマウント映画とはありし日のパラマウント・ファンはおどろきももの木。話の種にご覧あれ。
(映画評論家)