「トゥルー・ロマンス」あきれたアクションに大喜び
この記事は産経新聞94年01月11日の夕刊に掲載されました。
原名もこれ。哀愁または悲恋ロマンスと思うと大間違い。映画通はうれしくて腹をくすぐり、一般ファンはこのあきれた逃亡アクション二時間一分にバッチリ大喜びだろう。
デトロイトの漫画本屋の番頭が映画を見に行った。映画はチバシンイチの活劇とカンフー・アクション。本当はプレスリーが一番好きなこのアンチャン、この若者、この日が誕生日。そこで店主がプレゼントにコールガールをその映画館に送る。ガラすきの映画館。すぐにも若者見つけた彼女、その男の前にポップコーンぶちまけてゴメンアソバセ。するとねらわれた男、ドウイタシマシテ。その夜二人はたちまち結ばれたが、この映画、これからえらいことになってくる。この女、マフィアの一味でもあったのだ。ロスで二人の泊まったモテルの部屋に恐怖の男が飛び込んでガンを女に突き付けアッとびっくり。そのスリル。
見つめ見とれるうちに「俺たちに明日はない」のパロディーとわかってくる。女も強いが男も強い。あきれたこの二人を追うのがマフィアとFBI。かくてこの映画、いかにあいなりますかのお楽しみ。とはかんたんながら、映画を知りきったこの映画のタッチがごきげんだ。
監督トニー・スコット。「トップガン」の監督だ。脚本がクエンティン・タランティーノ。これがうまい。あの「レザボア・ドックス」の監督、そして脚本家だ。主演女優パトリシア・アークエット。初主演ながらなかなかよろしく、共演のクリスチャン・スレーターは「薔薇の名前」と「忘れられない人」。それにおなじみデニス・ホッパー。さらに「レザボア・ドックス」の太っちょ男をやったクリストファー・ペンというわけで、活動写真仲間がワイワイ楽しんだムードのこのスリル、ロマンス、アクション、やっぱり映画ファンの胸をズキズキさせますぜ。とにかくこのやさしき題名には、だまされるなかれ!
(映画評論家)