「スピード」
この記事は産経新聞94年10月11日の夕刊に掲載されました。
ことし最高スリル。1994年アメリカ映画カラー1時間55分。二十世紀フォックス映画。
映画以外出せない恐怖。もちろん脚本はオリジナル。監督ヤン・デ・ボン、これが第一作。出来、そのこわさ最高。次回は「ゴジラ」という。やっぱり。
ロスの高層ビル、そのエレベーター爆破の宣告。犯人300万ドル要求。中に十数人。どうなる。このエレベーター恐怖。
ロス警察員ジャック(キアヌ・リーヴス)と相棒、命がけの救助。ところが犯人、こんどはバスを狙った。15人の乗客。犯人、自室自家製テレビでこれを見つめ、3時間以内に370万ドルを出さねばバス爆発と宣告。しかもバスのスピード、時速80キロ以下に落とせば爆発。乗客1人でも降ろせば爆発。
ついにジャック乗り込む。バス内チンピラやくざ、自分かと発砲。これが運転手に当たり、乗客の勇敢な女(サンドラ・ブロック)がバスのハンドルを握った。ヘリもバスを守り、オートバイもバスに迫るが、このバス、ハイウエー途中15メートルの未完成の空間を知る。このバス、果たしてこの15メートル飛び越えられるか。
ついにジャック、走るバスの下の裏がわに身をくぐらせて、時間爆破のスイッチを探る。それを切り落としたがさらに…というわけで、見ているこちらが呼吸が止まる。これぞ映画そのもののオリジナルだよ。
「天国と地獄」「新幹線大爆破」と、日本でも、その他この手はいっぱい。古くはチャールズ・ハッチスン連続大活劇「スピード・ハッチ」(1922)、これ原名はそっくりそのまま今日の映画と同じ“スピード”。
「リトル・ブッダ」のキアヌ・リーヴスが見違える男らしさを見せたぞ。「駅馬車」のジョン・ウェイン登場を思わせたよ。
ところで、極悪のこの犯人が映画ファンの最も愛する「アメリカの友人」のデニス・ホッパー、ほんまに笑わせますよ。ところがこのホッパーの怖さがまた凄い。
映画もこうなると、お茶づけではこの脚本、この演出のエネルギーは生まれまい。やっぱり、でっかいビフテキ食わにゃアカンわ。
(映画評論家)