「フランケンシュタイン」
この記事は産経新聞94年11月22日の夕刊に掲載されました。
これはまだ来年の2月ごろ封切り予定なので紹介は早かろうが、この映画こそ映画のクラシック。活動写真の始まりのころから活動写真に登場しており、それが1908年(明治41年)というころだから、私の生まれる一年前すでにこのフランケンシュタイン博士の作った人造人間は活動写真の画面に登場していたのであって、このフランケンシュタインの怪物と言われ、のちにはフランケンシュタインがまるで怪物と思われるくらい、この「フランケンシュタイン」は映画でも有名となった。
しかしこれのきめては1931年(昭和6年)、ユニヴァーサルがイギリスからジェイムズ・ホエイルという監督を招いて作ったのがヒットした。
これはもともと有名なメアリー・シェリーの怪奇小説なのだが、早くから舞台でも劇となって上演されており、そのためユニヴァーサルもこの怪人、すなわち人造人間に舞台役者のボリス・カーロフを使ったところこれが大ヒットして、それいらい数かぎりなしといえるほどこの怪物は映画に登場した。
映画は血を吸うドラキュラとこの人造人間のフランケンシュタインの怪物と野性人ターザンで富豪となった。そしてこの活動写真のクラシックは今度、はっきりと教科書さながらに作られた。
というわけは、ボリス・カーロフのが一番よかったのだが、あの映画のセンチメントを捨てて、今度はガッチリと原作のそれを間違うことなく映画で見せますぞという、これがコッポラの製作で、ケネス・ブラナーの監督、そして主演すなわちフランケンシュタイン博士の人造人間がロバート・デ・ニーロとなると、これはちょいと本気でこの作品に乗り気になっちまう。
共演の顔ぶれも立派だが、イギリスの今や第一のやり手となっているケネス・ブラナー、気取って申せばこのシェイクスピア役者が、ただの怪物映画を作るわけがない。
それに万年映画青年のコッポラ、加えて自分も映画の監督をした「ブロンクス物語」のデ・ニーロ。こんな連中がフランケンシュタイン映画を取り上げたところが面白い。
(映画評論家)