「フリントストーン モダン石器時代」
この記事は産経新聞94年06月21日の夕刊に掲載されました。
1994年アメリカ映画1時間31分。監督ブライアン・レバントはディズニー漫画の脚本家上がり。監督となってからは、ワンちゃんの「ベートーベン」がある。
この映画、呼びものはスピルバーグとなっているが、彼はこの映画のプレゼンター。製作配給引き受けどころといったところ。映画はユニヴァーサル映画。スピルバーグは若き日、ここで「ジョーズ」を出して人気監督のスタートを切った。それやこれやで、このユニヴァーサル映画に名をつらねたのであろう。
映画は題名どおり石器時代。原名「ザ・フリントストーンズ」、これは「火打ち石時代」。チャップリンもキートンもあらゆる喜劇スタアが一度はこの石器時代を演じたが、キートンの「滑稽恋愛三代記」(1923)が有名。石器時代にベン・ハーの一大競技競争などが出た。
今度の映画は「バートン・フィンク」の太ったジョン・グッドマン。ベーブ・ルース伝記の「夢に生きた男/ザ・ベーブ」に主演。これと「ゴースト・バスターズ」のリック・モラニス。この太っちょと小型男二人の珍友情騒動、要するに古くニコニコ大会華やかなりしころのスラップスティック・コメディ。ハムとチビ、ローレルとハーディという具合に懐かしい。
大正12年(1923)ころは、盆と正月はニコニコ大会と称し、この手の短編いっせい7本立てで人気を呼んだ。パロディ(もじり、悪ジャレ)の連続で笑いまくらせた。
石器時代に会社のタイム・カード、エンピツけずり、エレベーター、ボーリング、さらに映画館まであって、上映するはユニバーシェル(貝殻)映画といった具合。悪役(わるやく)にカイル・マクラクラン、主役2人の細君役にエリザベス・パーキンスとロージー・オドネル、それよりもゲスト・スタアにリズ・テイラー(62歳)がちょい役をやってみせるあたり、スピルバーグの顔のききどころ。
昔のパンにラムネの場内売りのあったころの活動写真館ムードで、ご家族そろってごらんあれという、おしゃれドタバタ・コメディであります。
(映画評論家)