「僕らはみんな生きている」"ジャングル"のなか迷う日本人
この記事は産経新聞93年03月16日の朝刊に掲載されました。
努力賞日本映画。そのような現地ロケの日本映画。いろいろとあちらの風景も入れ、日本人商社の出張員がああなればああなる画面は、見ていると実際にこうなるかと日本人としては身にもつまされ、なまなましい同情とガンバレの日本びいきも沸きかねない。
このように日本映画がセットを離れ、しかも大作気取りを避けて主役を4人に組ませてのアイディアと撮影には大いに拍手ものだが、とにかく日本人独特の説明べたが最初から始まって、映画自体にこれがつきまとう。それを演技で補っているのだが、これまたすべてオーバー・アクトの4人組となってしまったのが惜しい。真田広之が、抜群とはおおげさだが気分満点の好演を見せようとし、それが画面ににじみ声援いっぱいというところなのに、ここぞと気張りすぎた。
主役4人全体が気張りすぎた。つまりオーバー・アクト。これはひとえに監督の滝田洋二郎の、いうならば観客への御親切ごころがうらめに出たというわけだ。なぜ、も少し押さえなかったのか。これは原作・脚本(一色伸幸)が心して、深刻になる日本独特のお涙を避けたからであろうが、この良さが説明までをも呑気に走らせたきらいが、この映画をマイナスに落としている。
真田はじめ岸部一徳、嶋田久作、山崎努の4名の個性個性個性をあまりにも鮮やかにと思ってか、この4人がいうならばレコード盤の早廻しとなって、私は途中3回4回、演技を台詞を押さえろと心のうちで叫んだ次第。
けれども、日本映画がこのように浜田毅の撮影監督でジャングルとその土地を実感させて撮影。そのキャメラの動きはすばらしい。
さてこの4人、裸身でさらに私たちをくすぐらせるか。このあたり、どこかいつの間にかさらり身をかわされて、立派なラストが物足りないよ。
(映画評論家)