「おこげ」やっぱり日本では手加減するのか

この記事は産経新聞９２年０９月２２日の朝刊に掲載されました。

題名が面白いのでコメディーと思ったら真顔。おこげとは、おかまにくっついた女の子。もうずっと前から知る人ぞ知る呼び名という。原作者が映画脚色して監督した。中島丈博監督作。

ここに登場のふたりのおかま。全然そうは見えぬふたり。こういうのをおかまというのはおかしい。妻のあるヒゲの男と独身の若いの。全裸でもつれあっている。若いほうのマンション。ここへ本宅の母が家庭喧嘩で飛び込んで来て、もうおまえとここで一緒に暮らすと泣く。びっくり。ヒゲがあわてて逃げた。このシーンがすばらしい。

ところがこれをゲイバーでふたりがこぼしたのを、面白半分覗きに来ていた娘というより女の子が、面白半分あたいの部屋貸したげると若いのを泊め、今度はヒゲがこのマンションで彼と抱き合う。２階と下。その下の部屋に寝ている娘。面白がるし、いいことしてあげたという理解顔。原作がこうらしく、ここが困った。作者の腹は、女を使って男ふたりの結びを観客に教える工夫。これが困ったが、今日びこんな女いますよと若いのが私に言う。だからここをつくのは見当外れと申してもよかろうが、どだいここは無理。女のいる部屋でホモ２人はやれるわけはない。

マジで描きたかったのを、この作者は半分おふざけ半分本気。本気１本で作ればいいものを、女の子でこの映画をふやかした。しかし、近く同じホモものが出るが、それとこれとは幼稚園と大学生。大学生と申したが、本音は中学上級生。

娘（清水美砂）、からりとよろしいが邪魔。ヒゲが中原丈雄、若いのが村田雄浩、このふたりが個性を出した。どちらもがどちらもよろしい。とくにヒゲ（映画では寺崎）が巧い。若い男（剛）も、これが監督の目の使いであろう、そのホモぶりは男っぽく、これを男の若い純情で見せて成功。外国に『モーリス』もあったのに、やっぱり日本では手加減するのか。(映画評論家)