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星組「愛するには短すぎる」「ネオ・ダンディズム!」宝塚大劇場公演評
“男役芸”の極み、“男役の美学!
9月6日(水) 大阪夕刊 by 平松澄子
星組トップスター、湖月わたるの退団公演となった宝塚大劇場の2作品。「愛するには短すぎる」では熟練した“男役芸”の極みが、「ネオ・ダンディズム!」ではかっこよさを追求した“男役の美学”が楽しめる。また、娘役トップ、白羽ゆりもこのあと雪組に移籍することが決まり、2人のトップ・コンビでは最後の大劇場公演である。

「愛する−」(小林公平原案、正塚晴彦脚本・演出)は、ロンドンからニューヨークへ向かう豪華客船を舞台にした4日間の物語。大財閥の養子フレッド(湖月)は、船上で幼なじみのバーバラ(白羽)と再会し、心が揺れる。この2人のせつない恋模様を軸に、フレッドの親友アンソニー(安蘭けい)、執事のジェラルド(未沙のえる=専科)、貴族の夫婦、バレエ団のメンバー、プロデューサーや女優らがからみ、さまざまな人間模様が、凝縮して描かれる。

普通のスーツ姿、何気ない会話が、ごく自然に感じられるのは、長年の男役の鍛錬のたまもの。湖月と次期トップに内定した安蘭に、芸達者の未沙が加わったやりとりは、この3人でしか出せない絶妙の味わいだ。

「エッ」「うん」など短い言葉まで無駄がなく、ささいな事件をちりばめて、大勢の人たちをうまく動かす。パズルをはめ込むように計算された演出が見事に決まり、かつてのハリウッド映画を彷彿(ほうふつ)とさせる上質の雰囲気に仕上がった。

「ネオ−」(岡田敬二作・演出)はロマンチック・レビューシリーズの17作目。オープニングのチャイナスタイルから、ガウチョ姿、極めつきのエンビ服など、男役のかっこいいコスチュームプレーが次から次へと楽しめる。

堂々とした立役のダンサー、湖月はダイナミックな魅力が炸裂(さくれつ)。白羽を片手でリフトして回転するデュエット・ダンスは圧巻だ。星組は91人の大所帯になったが、やはりレビューは数の迫力が圧倒的。今では世界でも宝塚でしか見られない華麗な夢が、そこにある。18日まで。

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