宝塚歌劇花組「ミュージカル『ファントム』」(脚本=アーサー・コピット、作曲=モーリー・イェストン、潤色・演出=中村一徳、翻訳=青鹿宏二)東京公演が25日午後から東京・日比谷の東京宝塚劇場で始まった。桜乃彩音が相手役になった新トップコンビの東京宝塚劇場お披露目になる公演。10月1日まで。
アメリカのミュージカルの宝塚版で、2004年の
宙組に次いで2年ぶりの再演。歌を得意とするトップスター、春野寿美礼がファントム役でイェストンの美しい楽曲を巧みに歌い上げる。
舞台は19世紀後半のパリ。醜い顔を仮面に隠し、オペラ座の地下に住むエリック(春野)は、ファントム(怪人)と呼ばれておそれられていた。ある日、美しい歌声にひかれたエリックは、その娘クリスティーヌ(桜乃)の歌唱指導を、正体を隠して買って出て、深く愛するようになる。しかし、彼女が毒薬を飲まされて歌えなくなったことから、恐ろしい復讐に突っ走って…。
演出の中村によると、宙組版の際は、あまり“宝塚的”ではないこの作品を、いかに宝塚らしくするかに腐心した。今回は、すでに物語の筋は宝塚ファンに認知されているという前提に立ち、登場人物の人間関係をより掘り下げて描いた。具体的にはファントムとクリスティーヌの師弟愛や“原作版”においてもあまり踏み込まれていないフィリップ伯爵(真飛聖)とクリスティーヌの恋愛感情などだ。この結果、愛を知らずに育ったひとりの青年としてのファントム。そしてその父親ですべての秘密を知っているオペラ座の前支配人キャリエール(彩吹真央)との関係性など人間ドラマとしての側面がより強まっている。
初々しく可憐なクリスティーヌは桜乃にぴったり。キャリエールとエリックとが終盤、掛け合いで歌うシーンは、聴きごたえ十分。専科の出雲綾が宙組に続いてカルロッタ役で出演。真飛が純二枚目のシャンドン伯爵をさわやかに演じている。
この日は午前の舞台稽古に続いて春野と桜乃のふたりが記者会見した。
春野は「最初に台本を読んだ際、エリックという人間がとても純粋な心をもった青年だと感じました。その部分を強く出せたらいいと思いながら毎日公演をしています。そのためには、まず自分が日ごろから素直な気持ちになりなくてはいけないと肝に銘じています」と、取り組み意欲を語った。
相手役として初めて東京宝塚劇場に立つ桜乃は会見の間もたえず春野をみつめ続け、「花組に入ってからずっと春野さんを見させていただいています。すべてが大きい方だと思いながら舞台に立っています。千秋楽までこの幸せな気持ちを大切にしてせいいっぱいがんばりたいです」と初々しさいっぱいにこたえた。
■会見一問一答
春野寿美礼 春野寿美礼です。あ、みなさんご存じでしたか…。毎日、身を引き締め、千秋楽まで東京公演をがんばっていこうと思います、どうぞよろしくお願いします。
桜乃彩音 桜乃彩音でございます。本日は通し舞台稽古にお越しいただきありがとうございます。千秋楽まで、この幸せな気持ちを大切にしてせいいっぱいがんばりたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。
−−どのようなポイントを大事に演じているか?
春野 最初に台本を読んだ際に強く感じた、エリックという人間がとても純粋な心をもった青年だという点を強く出していけたらいいなと思っています。それには、まず自分が素直でいなくては純粋なものとは何か−−と、迷ってしまいます。そこで、まず日ごろから素直な気持ちでいよう。そのうえで舞台で純粋なエリックを演じようと思っています。
桜乃 春野さんが演じられるエリックはとても心がきれいで、純粋な方なので、私もそれをまっすぐに受け止められるよう、日ごろ純粋な気持ちでいるよう、まっすぐに舞台に立てるよう心がけています。
−−お互いの魅力は?
春野 ふふふ。桜乃はコンサートとかでもいっしょにやったりしたので、とても素直な人だということは分かっていました。ですが、思いのほかの“天然ぶり”で。突然おもしろいことを言い出したりして、見かけからは想像もつかない意外さがあります。
桜乃 花組に入ってからずっと春野さんを見させていただいていて、ご一緒にお芝居させていただいたり、歌わせていただいたりして、すべてが大きい方だと感じています。
−−仮面をつけての難しさは?
春野 思ったほど悪影響はなかったですね。仮面をつけててもそうでなくても違和感がなくて、たまにつけ忘れて舞台に出てしまいました。で、周りの方から「つけてないですよ」って注意されたりして。演技のうえでの苦労はないわけですが、仮面が顔の傷を隠すうえで重要な役割を果たしますから、自分はクリスタルのように繊細な仮面をつけているのだというイメージを喚起してつけるようにしています。
−−仮面は何種類つけるのか?
春野 4種類。
−−お気に入りの歌は?
桜乃 「ユー・アー・ミュージック」。銀橋で春野さんと歌わせていただく歌で、すごく好きです。全部好きですけど。
春野 私は…そうですね…1曲だけと挙げるのは難しいのですけれど、もちろん「ユー・アー・ミュージック」も好きですが、自分がソロでうたうた「ホエア・イン・ザ・ワールド」でしょうか。エリックの心情をストレートに表していると思うので。
■STAGE GRAPHはこちらです。
ストーリーに触れています。
あらすじを知らずかつ観劇予定のある方はご注意ください。