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「エリザベート」宝塚歌劇団月組大劇場公演評
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彩輝トートに男役ならではの妖しい美
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この世のものではない美しさ、妖(あや)しさを表現するのに、宝塚ほどふさわしい舞台はない。5度目の上演になる宝塚大劇場の月組公演「エリザベート−愛と死の輪舞(ロンド)−」を見て、そう再認識させられた(関連記事:「エリザベート」開幕)。
ウィーン発のこのミュージカルが日本で大ブレークした最大の理由は、主人公を黄泉(よみ)の帝王トートに変えて、大胆に潤色・演出(小池修一郎)したことだが、トップスター、彩輝直が演じるトートには、男役でしか出せない幻想的な魅力があふれている。これが退団公演になり、言葉の一つ一つ、指先の端々まで入魂の演技を見せて、有終の美を飾る。
19世紀末のオーストリア・ハンガリー帝国崩壊の序曲を、美貌(びぼう)の皇妃エリザベート(瀬奈じゅん)の自由を求める生きざまと、彼女を愛するトートとの不思議な愛憎をからめて、歌とダンスで描く大河ロマン。皇妃を暗殺したイタリア人アナキストのルキーニ(霧矢大夢)を裁く、100年後の裁判劇のスタイルで進行する。
女役のエリザベートに男役では初挑戦になる瀬奈は、姿形の美しさに加えて、高い声もよく出て大健闘。前半は無邪気で快活なかわいさを、後半は自立を模索して悩める皇妃を演じ分け、トートと対等に並び立つ、大きさと強さを感じさせる新しいエリザベート像になった。毎回新しさを加える小池演出のけい眼である。ほかにミルクを求めるウィーンの街頭、エリザベートの運動の間のシーンなども変わっているので注目!(関連記事:製作発表)
説明役の霧矢、皇帝フランツ役の初風緑(専科)はセリフの口跡がよく、歌も達者。皇太子ルドルフ役の大空祐飛は憂愁の貴公子にぴったり。皇太后ゾフィーの大役で退団する美々杏里は、フィナーレのエトワールでも自慢の歌声を聴かせている。
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