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星組「長崎しぐれ坂」宝塚大劇場公演評
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貴重な日本物にベストキャストそろう
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まさにこのとき、このキャストが、この作品にそろった。宝塚大劇場の星組公演「長崎しぐれ坂−榎本滋民作『江戸無宿』より−」(植田紳爾脚色・演出)は、その場でしか見られない演劇の醍醐(だいご)味がある。
特別出演の専科スター、轟悠が江戸無宿のお尋ね者、伊佐次。トップの湖月わたるは彼を追う長崎奉行所の下っ端、卯之助。これが退団公演となる娘役トップの檀れいは、堺の芸者、おしま。神田明神の氏子で幼なじみという設定の3人が、長崎で顔を合わせて繰り広げる人情劇は、実績と実力を備えた充実期の3人ならではの、大人の味わいの芝居だ。
“男くさい芝居”が売りものだった新国劇の作品が、麗しの女の園でどう演じられるのか。そんな懸念も大御所演出家の手にかかれば、たやすく華麗な“宝塚歌舞伎”に変わる。
“チョン、パッ”で浮かび上がる、鳶(とび)頭や芸者衆が並んだ神田明神の祭りのまばゆさに続いて、異国情緒あふれる長崎の蛇踊りとなるプロローグ。追いつ追われつのクライマックスを盛り上げる幻想的な精霊(しょうろう)流しの踊りの列…。祭りの取り入れ方が実に巧みで、舞いのスペシャリスト、松本悠里(専科)が情感あふれる姿で異次元に誘う。
安蘭けい、真飛聖らほかの出演者は、少ない出番でメいっぱい個性を発揮。動くお神輿(みこし)、長崎唐人屋敷俯瞰図の幕など装置も力作だ。またひとつ、宝塚の懐の深さを教えられた。今年の大劇場の日本物はこの作品だけだが、貴重な財産として長くつないでいってほしい。
「ソウル・オブ・シバ!!−夢のシューズを履いた舞神−」(藤井大介作・演出)は、この世に舞いを生み出したシバの魂が1人の青年(湖月)に吹き込まれ、現代のニューヨークを舞台に夢と熱狂をもたらすストーリー性のあるショー。1人のタップから始まり、しだいに群舞に広がっていく迫力。タキシードの男役たちのセクシーなダンスなどは、ダンサーぞろいの星組の本領発揮だ。なかでも男役ホープ、柚希礼音ののびやかさは圧倒的。
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