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花組 蘭寿とむ:宝塚ファンタジア 夢の小部屋
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そして10年、包みこむように
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平成7年に起きた阪神大震災は、宝塚歌劇団にも大きな被害をもたらした。生徒に犠牲者こそ出なかったものの、宝塚大劇場の舞台は傷つき、スプリンクラーが作動し場内は水浸しになっていた。とても公演が行える状態ではなく、17日以降は休演を余儀なくされた。それでも、公演の再開を待つ多くのファンの声を受けて急ピッチで復旧作業は進み、3月31日には星組公演『国境のない地図』の初日を迎えた。
震災10年を迎える今月17日の宝塚大劇場では、選抜メンバーによるチャリティーコンサートが行われる。
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花組の蘭寿とむは宝塚音楽学校時代に大震災に遭遇した。西宮市出身で自身も被災したが、幸いにも大きなケガはなかった。しかし、傷ついた音楽学校や大劇場を見たり、犠牲者のニュースを耳にするたびに胸が痛んだ。
そんなつらい経験に負けることなくレッスンに励み、平成8年に音楽学校を首席で卒業した。
同14年には『エリザベート』の新人公演で主演のトートに抜擢された。『エリザベート』は歌がメーンの難しい作品で、今までにないプレッシャーを感じたという。
「最高の出来とは言えないかもしれませんが、作品に精いっぱいぶつかっていくことで、自分の中にある一つのハードルを越えることができたと思います」と言う通り、舞台人としての自信を深めるきっかけを与えてくれた。
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今回のバウホール公演で主演する『くらわんか』は、古典落語を題材にした人情喜劇。「主役の八五郎は出番が多く、セリフを覚えるのが大変でした」とけいこ場での苦労を明かす。
それでも、初春の公演には特別の思い入れがある。「昨年に続き、新春を飾るお正月公演に出させて頂くのは、舞台人としてとても光栄なことです。若いパワーで舞台を盛り上げ、お客様に楽しんでいただきたいですね」と公演への情熱を燃やす。
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目標はシャープさと柔らかさをあわせ持った、包容力のある舞台人。
主演という立場に立って初めて「けいこ場では気づかなかった、下級生の陰の努力が見えてきました」と話す。後輩たちを見守るやさしくも厳しいまなざしが、10年目にかける彼女の熱意を物語っていた。
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