ENAK LONG INTERVIEW VOL.21
ジャズピアニスト
山下洋輔
日米交流150周年記念公演
ジャズ世界のラストサムライ
サムライはひとりでピアノの練習に没頭していた。東京西の閑静な街、国立にある練習スタジオ。曲は平成12年に発表した自作の協奏曲「即興演奏家の為のエンカウンター」。イタリア・トリノで佐渡裕が指揮するRAI国立放送オーケストラと共に演奏するのだ。黒のタートルネックのセーターに黒いパンツ姿のサムライは、真っ黒なピアノと一体になって、なにやら精悍(せいかん)な獣を思わせる。
山下洋輔はジャズのラストサムライだ。
彼の大先輩である秋吉敏子(ピアノ)は、初作品が米国で紹介され、米国の音楽学校に留学。拠点を米国において活躍している。秋吉の薫陶を受けた渡辺貞夫(アルトサックス)もまた、米国の音楽学校に留学。帰国後の彼の演奏は日本ジャズ界にセンセーショナルを巻き起こす。
一方、山下のずっと後輩たちを見渡せば、ともかく米国の音楽学校卒業生がずらり。
ジャズは米国が生んだ唯一の芸術だ。そのふるさとの川へ帰ろうとするのは、ジャズマンというサケにとっては当然のことなのかもしれない。
しかし、山下はその川を目指そうとはしなかった。17歳でプロの世界に飛び込み、東京にある音楽大学で作曲を勉強しながら演奏活動も続けた。一時的な病気療養をへて昭和44年にサックスとドラムとによるトリオを結成すると衝撃的なフリージャズを演奏し、その名をとどろかせる。以後、山下の拠点は日本であり続けた。
「僕は日本の観客の質の高さを、そのすばらしさを知っていますからね」
武士道ならずJAZZ道?
山下が本格的に米国に出向くのは、やっと1985(昭和60)年のことだ。それはニューオーリンズからニューヨークへとジャズの歴史を訪ねるという目的で行われ、山下は単身各地のライブハウスに乱入した。修行中の宮本武蔵が京都の吉岡道場に一門と果たし合いをしたようなものだ。まさに山下洋輔はジャズサムライなのだ。
さらに、1988(昭和63)年になると米ニューヨークの演奏家と「ニューヨーク・トリオ」を結成。ベースのセシル・マクビー、ドラムのフェローン・アクラフ。
映画「ラスト サムライ」(関連記事:glace 「ラスト サムライ」)は、渡辺謙演じる勝元がネイサン・オールグレン大尉(トム・クルーズ)と堅い絆で結ばれていく物語だったが、勝元とネイサンのように、山下とふたりのニューヨークの演奏家は以後、世界をまたにかけた活動を続ける。いよいよジャズのラストサムライにふさわしい展開。
映画でふたりを結びつけたものは武士道の精神だったが、ニューヨーク・トリオを結びつけるのはジャズ道の精神か。
TEXT & PHOTO BY TAKESHI ISHII/石井健
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日米交流150周年記念
山下洋輔ニューヨーク・トリオ
「パシフィック・クロッシング」コンサート
[日時]12月2日(木)開演19:00
[会場]横浜・関内ホール
[出演]山下洋輔ニューヨーク・トリオ
山下洋輔(ピアノ)
セシル・マクビー(ベース)
フェローン・アクラフ(ドラム)
ゲスト:藤舎名生(笛)
仙波清彦(鼓ほか)
[料金]¥6,000(全席指定・税込)
[問い合わせ]ジャムライス:03(3478)0331
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パシフィック・クロッシング
山下洋輔ニューヨーク・トリオ
UCCJ-2028 ¥3,000(税込)
01.フェイズ・アフター・フェイズ
02.シャボン玉
03.ヘイケ・キッズ
04.四神剣
05.水神・風神
06.五人囃子
07.レクイエム
08.トリプル・エクスプロージョン
09.かなりや |
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PROFILE |
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昭和17年2月26日東京生まれ。44年、山下洋輔トリオを結成、フリー・フォームのエネルギッシュな演奏でジャズ界に大きな衝撃を与える。
63年山下洋輔ニューヨーク・トリオを結成。国内のみならず世界各国で演奏活動を展開。
ジャズ以外でも平成10年、今村昌平監督の映画『カンゾー先生』の音楽を担当し、平成10年度の芸術選奨文部大臣賞(大衆芸能部門)を受賞。15年には紫綬褒章受章。
15年まで洗足学園音楽大学ジャズ・コースの客員教授を務め、16年4月からは母校国立音楽大学の客員教授に就任。
多数の著書を持つエッセイストとしても知られる。(公式サイトから抜粋) |
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公式サイト
http://www.jamrice.co.jp/ |
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