ENAK LONG INTERVIEW VOL.20
俳優
大倉孝二
初主演映画「クリスマス・クリスマス」公開
“河合耆三郎”は“ビート役者”だった!
しかし、大倉孝ニはおもしろい。
NHK大河ドラマ「新撰組!」の誠実な勘定方、河合耆三郎を演じた。脚本の三谷幸喜の手腕もあるのだろうが、史実に縛られずに幕末の若者の人間味を好演する姿にはすっかり魅了された。
だけど、会ってみたら、いきなりこんなことをいうのだ。
「僕になったらつまんないですよ。『俺になってみぃ』って思いますねぇ」
うーん。取材中もこちらが「あ」と感じたすきに「うん」で笑いに着地させる。「あ・うん」の呼吸といっていいかはともかく、取材のやりとりに絶妙の間をもたらす。テンポいい語り口でいたって冷静というか冷ややかに自己分析する。やっぱり、おもしろい。
取材場所は東京・渋谷の貸し会議室。いささか殺風景な部屋の中で、紺色のパーカー、ロンドンテイストなチェックのウールパンツで186センチの長身を包み、三十路には見えない。
「新撰組!」で、耆三郎は行き違いから切腹する非業の最期を遂げた。
「もっと格好悪く死にたかったんですよ。ただ、テレビドラマでの表現の限界もありましたからね」
舞台の魅力は「ライブ感」
そんな表現における限界が限りなく無限に近そうなのが、大倉が所属する劇団「ナイロン100℃」の舞台だ。演出家、ケラリーノ・サンドロヴィッチが主宰するこの小劇団は、独創的な悲喜を武器に根強い人気を誇る。12月の公演「消失」もすでに全席、完売。
「ライブ感」。舞台の魅力をひとことで、そう説明する。
「あんな経験ってないと思いますよ。失敗できない。失敗してもいいんですよ、実際、するしね。だけど本番前、どうにかなりそうになる。心臓にこんな負荷をかけていたら、このまま死ぬかもって思うくらい。その緊張感、逃げ道のないこと。これは他では体験できない」
たぶん、舞台という根っこがあるから、安心してあちらこちらへ出かけていけるのだろう。「新選組!」出演を筆頭に映画やテレビCMなど、活躍の場はぐんぐん広がっている。
12月には初めての主演映画「クリスマス・クリスマス」が公開される。演じるのは同棲4年目で恋人と倦怠期真っ只中にある健太。ケンカをして家を飛び出した健太は、なぞの秘密組織「ファンタジー保存協会」に拉致される。協会の活動内容を知らされてびっくり。UFOやネッシー、人面魚などありとあらゆる伝説のたぐいは、すべて「ファンタジー保存協会」が“捏造(ねつぞう)”していたというのだ。そして聖夜に空からファンタジーが降ってくる…。
脚本は、久本雅美、柴田理恵らが所属する人気劇団「WAHAHA本舗」の俳優兼作家、すずまさが手がけただけに、笑い満載でハートウオーミングな作品になっている。
しかし、冷め切った現代社会だ。夢を提供すべく活動に励む協会員の姿には、ともすれば身構えてしまう大人も多いのでは?
「見る方がそう感じるのでしたら、それでいい。自由に思ってほしい。笑えなくたって、『ありえない!』でもいいんですよ。映画は基本的に見る人のもの。役者がどうみてほしいか、は重要じゃない」
TEXT BY RYOKO KUBO/久保亮子
|
|
|
|
|
|
|
|
映画「クリスマス・クリスマス」
12月4日から東京・渋谷シネ・アミューズで公開。
http://www.kuri-kuri.jp/
|
|
|
|
PROFILE |
|
昭和49年7月18日生まれ。東京都出身。
平成7年劇団「ナイロン100℃」入団。「ウチハソバ ヤジャナイ〜version100℃〜」でデビュー。その後「贋作・桜の 森の満開の下」(野田秀樹/作・演出)、「彦馬がゆく」(三谷幸喜 /作・演出)、「ダブリンの鐘つきカビ人間」(後藤ひろひと/作・ G2/演出)、「赤鬼」(野田秀樹/作・演出)などに客演。
今年のNHK大河ドラマ「新選組!」で河合耆三郎役を好演。他、TVドラマも多数出演。映画も「ピンポン」(14年)、「g@me .」(15年)、「ジョゼと虎と魚たち」(同)、「天国の本屋〜恋火」(16年 )、「スゥイングガールズ」(16年)など話題作に多数出演。
初主演作「クリスマス・クリスマス」は12月4日から東京・渋谷シネ・アミューズで公開。 |
|
ナイロン100℃公式サイト
http://www.sillywalk.com/nylon/ |
|