2002年の国際禁制学会で認められた新しい疾患「過活動膀胱(ぼうこう)」。頻尿や急に強い尿意を感じる尿意切迫感、尿失禁といった自覚症状を伴い、生活の質を低下させる病気として注目されている。日本には、40歳以上の男女の12・4%にあたる約810万人がその症状に悩んでいると推測されているが、病気と認識して通院している人はごくわずかという。女性の泌尿器や生殖器障害を専門的に扱う診療科「ウロギネセンター」を設置している大阪中央病院(大阪市北区)の竹山政美・泌尿器科部長に聞いた。
日常に支障も
過活動膀胱は、急に抑えきれないほどの尿意が起きる尿意切迫感のほか、昼間8回以上、夜間1回以上の頻尿、トイレまで間に合わずもらしてしまう切迫性尿失禁といった症状が診断の根拠となる。
膀胱の排尿筋が自分の意思とは関係なく、収縮してしまう排尿筋過活動によって引き起こされる。脳卒中やパーキンソン病などのように、神経因性の原因で引き起こされるほか、加齢や骨盤底筋のゆるみ、男性の場合は前立腺肥大症なども背景にある。
尿意切迫感などの症状を抱える人は「外出先でトイレが気になる」「会議や出張、家事に集中できない」「夜間頻尿のため睡眠不足」「ドライブや旅行に行きにくい」「気分が晴れない」など、日常生活に支障を来していることが多い。
わずか5・2%
医薬品メーカーのファイザー(東京都渋谷区)は今年4月に、全国の40歳以上の男女900人を対象に、「排尿障害に関する意識調査」を実施した。
その結果、尿意切迫感が週に1回以上ある人は全体の18・4%と、約5人に1人が日常的に悩んでいることが判明した。一方、過活動膀胱の認知率は、わずか5・2%。切迫性尿失禁や間質性膀胱炎、性器脱といった泌尿器などにかかわるほかの病気に比べても認知度が低かった。
「自身が過活動膀胱であると思いますか」との問いには、17・3%にあたる156人が「はい」と回答。しかし、病院で受診した経験があるのは、そのうちわずか7・7%の12人だった。
竹山部長は「病気の認知の低さに加え、『年だから』『体質のせい』『病院に行きにくい』といった理由で、通院している人はほんのわずか」と指摘する。
生活の見直し有効
治療には、薬物治療や排尿筋活動に電気刺激などを与える理学療法があるが、竹山部長は「まずは、生活の見直しや膀胱訓練、骨盤底筋の強化が有効」と話す。
生活習慣については、「水はたくさん飲んだ方が体にいい」という思い込みから、必要以上に水分を摂取し、頻尿につながっているケースが少なくないという。
また、初期尿意を感じたとき、すぐにトイレに駆け込んでしまう人は、膀胱に100〜150ccの尿しかたまっていない状態で排尿してしまうことになる。それを繰り返すことによって、通常300〜400ccはためることができる膀胱の筋肉機能が低下してしまうこともあるという。
竹山部長は「思い込みや生活習慣が原因になっていることが多い。病院で適切なアドバイスや治療を受ければ治る病気で、快適に生活できるようになる。気になることがあれば、気軽に病院を訪ねてほしい」と話している。
過活動膀胱解決サイトには、過活動膀胱のセルフチェックシートのほか、尿もれの対処方法、排尿日誌のつけ方などが紹介されている。