若者向け衣料品販売などを手がける丸井などが入った「東宝南街ビル」が22日、大阪・ミナミにオープンした。丸井の店舗は関西では神戸に続いて2店舗目だが、大阪へは初進出。大阪初登場となる53ブランドを含む158のショップを配置するなど、首都圏の主力店舗にも引けを取らない陣容で切り込む。同ビルにはミナミで初となるシネマコンプレックス(複合型映画館)もあり、初日から買い物客らでにぎわった。ミナミ活性化の起爆剤として地元商店街の期待も大きい。
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なんばマルイオープンを待つ買い物客ら。若者だけでなく、中高年の姿も目立った=午前9時36分、大阪市中央区 |
南海難波駅前の入り口には、オープン前から約1000人が列をつくり、午前10時の予定を10分前倒しして開店。丸井の各フロアはたちまち買い物客らでにぎわった。この日は平日ということもあり、主な顧客ターゲットとしている20代を中心とした若者のほか中高年の姿も目立った。
友人2人と来ていた大阪府寝屋川市の男子大学生(21)は「上品で高級感があり、東京らしい感じがした。大阪でメンズのショップがこれだけ集まっている店は珍しい。フォーマルからカジュアルまですべてそろいそうだ」と話していた。
同ビルは平成16年に閉館した旧東宝南街会館の跡地に建てられた。地下1階〜7階が「なんばマルイ」(売り場面積約1万7000平方メートル)、8〜11階に9スクリーンを備えた「TOHOシネマズなんば」(計1960席)が入っている。
丸井のオープンを歓迎するのは、地元・戎橋筋商店街だ。この日午後から、通りの南北2カ所に「アーケードコンシェルジュカウンター」を設置。今年と昨年の「ミスえびすばし」の女性ら6人が「お出迎え隊」として丸井目当てに訪れる買い物客を案内する。
同商店街振興組合の加藤孝明事務局長(58)は「街が一気に活気づくと思う。遠方からのお客さんも増えるだろうし、商店街全体でもてなしていきたい」と語った。
真向かいにある高島屋大阪店も「消費者の選択肢が増え、若者層の開拓が見込める」。一方、同じミナミでも、店舗が少し離れている大丸の関係者は「関西の消費者は初物食い。最初はマイナスの影響を受けるかもしれないが、一服すれば戻る」と冷ややかだ。
なんばマルイの初年度売り上げ目標は約170億円。大阪市内では平成23年に向けて百貨店各社の出店や増床などが相次ぎ、全国屈指の流通激戦区となる。キタとミナミの集客合戦も激化すると予想されるが、丸井では「若者向けファッションに特化した強みを生かしたい」としている。
神戸の成功で関西に旗艦店
首都圏を中心に店舗を展開してきた丸井。売り場面積で比較すると、「なんばマルイ」は東京・上野や横浜といった首都圏の主力店舗と同じ規模で、関西への本格進出を目指す意気込みをうかがうことができる。一方で「東京と大阪のファッションは微妙に違う。大阪の若者たちにどこまで受け入れられるか、まずはお手並み拝見」(関西のアパレル業界関係者)との声も出ている。
丸井は駅前一等地に次々出店することで首都圏で店舗を拡大し、とくに1980年代のDCブランドブームで若者の取り込みに成功した。なんばを除いて27店持つが、うち24店が首都圏とその周辺に集中している。
その丸井が関西でも受け入れられると手応えを感じたのは、関西1号店として平成15年に神戸・三宮にオープンした「神戸マルイ」の成功だった。売り場面積約7000平方メートルと小ぶりなうえ、開業当初は知名度不足も心配されたが、昨年度の売上高伸び率は丸井全店舗で最高の11・2%増を記録するなど、順調に業績を伸ばしている。
「ヤングファッションのマーケットは今や全国一律」。なんばマルイの陣頭指揮をとる浅田恭平店長はこう強調する。
80年代に東京で上品なアイビールックが人気を呼んでいたころ、大阪ではミナミのアメリカ村を発祥地とするサーファールックがブームとなるなど、かつて東西で若者ファッションの好みは大きく分かれていた。しかし、最近は雑誌やインターネットの影響力が強まっており、地域差はなくなってきたとされる。
ただ、丸井のある幹部は「神戸は東京と顧客の購買動向がほとんど変わらなかったが、大阪は神戸と違うという認識はある」と話しており、不確実な要素があるのも確か。大阪で成功するには「旬で元気なブランドをどれだけ集約し、店舗の中でどうコーディネートできるか」(別のアパレル業界関係者)が鍵になるのは間違いない。