高校生の半数が、友人との飲酒や電車内での携帯電話の使用を「悪い」とは思っていない−。高校生向け月刊誌「高校生新聞」(東京)が行ったアンケートの結果で、モラルをめぐる高校生のこんな意識が浮かび上がった。「路上や電車の床に座り込んで話す」も3割以上、「たばこを吸う」も2割が容認するなど、倫理観に赤信号がともっている。教育関係者は「かなり重い結果」と警鐘を鳴らしている。
調査は7月、全国29都道府県の54高校から、1〜3年の6168人(うち女子3311人)を対象に実施。倫理観に関する項目では、「やってはいけないと思うこと」を質問し、複数回答で答えてもらった。
「たばこを吸う」では全体の80%が「いけない」と回答。しかし、「友人とお酒を飲む」では52%、「電車の中で携帯電話で話す」でも54%が否定的な回答をしたものの、残りの約半数は容認した格好だ。
学年別にみると、友達との飲酒は、1年生では39%が容認しているが、3年生では55%に上昇。また、女子が休み時間に教室で化粧をすることについて質問したところ、否定的だったのは全体の36%にとどまり、6割以上が容認した。
「化粧」も1年生は40%が「やってはいけない」としたが、3年生では32%に低下。学年が進むごとにモラルの低下も進行していることが分かった。
こうした結果に、同誌の小川美紀子編集長は、「高校生は大人社会の縮図。教師や親など身近な大人に手本となるような人が少なくなっていると感じる。高校生だけがダメなわけではなく、周りの人全体で考えなければならない」と話す。
モラルの低下を示す結果の一方で、「目上に敬語」は9割、「近所の人にあいさつ」は7割が「する」と回答。一方で、「電車やバスで席を譲る」は4割未満。2割以上は「これまでに譲ったことはない」とした。
約5年半続いた小泉改革の負の遺産とされる「格差社会」。社会観についての質問で、男子の46%、女子の35%が「競争の結果、格差が広がるのは仕方がない」と答える。
しかし、「今のあなたが大切にしていること」という項目では、「勉強をがんばる」と回答したのはわずか15%にとどまり、格差を意識する一方で将来へ向かっての努力については心もとない現状が浮き彫りになった。
おかしな個性教育のツケ
「ヤンキー母校に帰る」などの著書がある東北福祉大学特任講師、義家弘介さんの話 「モラルの低下は顕著で、かなり重くみるべき結果だ。人前での化粧や電車の床に座るなどの行動は『恥じらい』の意識が極めて少なくなっていることの証拠。酒もコンビニがハードルを低くした。酒屋にしか酒がなかった時代、高校生が酒屋のオヤジから買うのは至難の業だったが、コンビニでは高校生がレジを打っている。公共の場での自分勝手な行動も『個性』扱いするような、おかしな個性教育の結果ともいえる。OLも平気で電車の中で化粧をしており、大人が注意してもその言葉に説得力がなくなっているようだ。子供への注意と同時に、大人の側も『子供のふり見て我が身を正す』ことが必要だろう」