携帯音楽プレーヤー市場で独走を続ける米アップルコンピュータ「iPod(アイポッド)」に対抗すべく、米マイクロソフト(MS)は年内に携帯プレーヤー「Zune(ズーン)」を投入し、パソコンOS(基本ソフト)でしのぎを削ったアップル対マイクロソフトの因縁の対決が再燃する。前回の戦いに日本メーカーの影は薄かったが、今回は、Zuneを生産するのは東芝で、iPodの中身もかなりの部分が日本製部品とかかわりは深い。日本メーカーの技術力対決の一面も持つ展開だ。
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ネット音楽配信事業を世界に浸透させた米アップルコンピュータのiPod。日本メーカーの技術が数多く使われている |
MS+東芝参戦
東芝のZune製造は、同社が米連邦通信委員会に提出した資料で判明した。東芝は「資料提出は事実だがそれ以上コメントできない」とする。しかし、製品資料には写真も添付され、本体裏面にマイクロソフトが7月に発表したZuneのロゴマークも見える。
資料によると、3インチの液晶画面と、音楽プレーヤーとしては大容量の30ギガバイトハードディスク駆動装置(HDD)を内蔵し、音楽だけでなく動画再生も可能という概要となっている。特徴的なのは、無線LANによる通信機能やFMラジオチューナーも備えていることで、月内にも詳細が発表される見通しだ。
東芝はMSとデジタル家電などで技術提携しているほか、次世代DVD規格でも同じ「HD DVD」陣営に属するなど、関係は深い。
迎え撃つアップル
パソコン、インターネット、携帯音楽プレーヤーを組み合わせたネット音楽配信事業は、パソコンソフト、レコード、電機など関係各社が収益を上げられる成功事業モデル。ソニーや松下電器産業などの日本メーカーも力を入れるが、圧倒的シェアを持つのは事業モデルを編み出したアップルで、MSは大きく後れを取っていた。
Zuneで切り崩しを図るMSを迎え撃つアップルは13日(米国時間12日)に内容を伏せた発表会を予定している。業界では「ビデオ機能が強化された新型iPodが発売されるのでは」「音楽に続いて、映画配信事業に乗り出すのではないか」などのうわさが飛び交い、因縁の対決は早くもヒートアップしている。
iPodの中身
あまり表には出ていないが、iPodの基幹部品のHDDは、東芝や日立製作所グループが供給。記憶媒体にフラッシュメモリーが用いられるようになってからも、東芝が一部を供給する。
さらに、昭和電工(HDD用基板)、HOYA(同)、TDK(磁気ヘッド)、日本電産(小型モーター)など「材料費の半分近くを日本製が占める」(アナリスト)との指摘もあり、株式市場で「iPod銘柄」と呼ばれるほどだ。
大手メーカーだけではない。本体裏面の鏡のように磨き上げられたステンレス素材は、東陽理化学研究所(新潟県燕市)の「鏡面加工」技術によるもの。電気と薬品で化学的に研磨する同社の要素技術を用いて地元・新潟の工場群で研磨作業が行われている。
前回のOS戦争の際は、日本メーカーはパソコンというハードメーカー群の一角として参戦したが、今回はなくてはならない存在だ。