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待ち時間イライラ+1杯のくつろぎ=ストレス軽減
病院にカフェ コーヒーチェーン、市場開拓
9月6日(水) 東京朝刊 by 海老沢類
どことなく閉鎖的な雰囲気が漂う病院内に、街中で人気のカフェが相次いで進出している。待ち時間のストレスを減らすことで患者サービスの向上を図りたい病院と、新たな市場開拓を目指す大手コーヒーチェーンの思惑が一致した形だ。店では、点字のメニュー表を置いたり、カウンターを低くしたりと、病院ならではの配慮にも力を入れている。

先月21日、病院内にオープンしたスターバックスコーヒー。診療科の受付が見渡せる通路の隅にある=東京都港区の東京慈恵会医科大学付属病院
先月21日、病院内にオープンしたスターバックスコーヒー。診療科の受付が見渡せる通路の隅にある=東京都港区の東京慈恵会医科大学付属病院


小規模でOK
東京・西新橋の慈恵医大病院。1階外来受付近くの通路脇にあるスターバックスコーヒーには、患者や見舞客らがひっきりなしに立ち寄る。1日の外来患者数3000人の病院で、平均600人が訪れる人気だ。

母親の付き添いで来たという都内の女性(33)は「診察の順番を待ちながら、ほっと一息つける」と、コーヒーを口に運ぶ。

通路脇への出店を可能にしたのは、一般的な路面店の半分以下の約10坪(34平方メートル)という省スペース設計だ。通常2つずつあるレジとサーバーは1つずつ。一方で、車いすの人が利用しやすいようにカウンターは低くした。「小さなスペースながら想定以上の売り上げ。病院を中心に、こうした小型店を年度内に10店展開する」(スターバックスコーヒージャパン広報室)という。

同病院内の食堂や喫茶コーナーはこれまで、受付から遠いことなどを理由に評判は今ひとつだった。病院の担当者は「長い待ち時間でも、患者さんがくつろいで過ごせる。接客サービスの良い企業が入り、病院職員の意識改革にもつながっている」と、カフェ誘致のメリットを強調する。

法人化も影響
他のコーヒーチェーンも「病院進出」を加速させている。

平成16年4月、他社に先駆け、東大医学部付属病院内に店舗を構えた、「タリーズコーヒー」を展開するフードエックス・グローブは現在、病院内に設けた店舗全7店で点字のメニュー表を置く。先月オープンした京都桂病院店では、高齢の患者らが待ち時間を座って過ごせるように、ベンチ席を2倍に増やしたという。

ドトールコーヒー社は、7月だけで3つの病院に出店した。そのうちの1つ、「エクセルシオールカフェ」東京医療センター店では、現場の医療スタッフが利用しやすいように、開院より1時間早く店を開いている。昨年開業した京都大病院店が、市内で1、2を争う売り上げを記録したこともあり、「今後も積極的に出店する計画」(同社広報)という。

このように2年前に登場した病院内店舗は現在、スターバックス、タリーズ、ドトールの3社で30店に迫る勢いだ。16年の国立大学法人化による規制緩和を受け、国立大付属病院も民間のコーヒーチェーン誘致に力を入れている。

矢野経済研究所の向畑吉大さんは「安定して人が集まる病院のような施設内は、カフェの立地として有望視されている。病院側にとっても差別化を図れるため、業績が良ければ今後も参入が続くのではないか」と話している。

ちなみにメニューは各社ともあえて路面店と同じにしているという。フードエックス・グローブの小沼綾さんは「病気で外に出られない患者さんも多い。街中にあるものに接してもらうことで、病院内でも日常生活気分を感じてほしい」と、その理由を説明している。

官庁や高速道にも進出
矢野経済研究所によると、平成18年度の国内のカフェ店舗数は5年前より約1万店減り、8万店程度になると予測されている。個人経営の喫茶店が激減しているためだが、一方で、セルフ式を売りとする大手コーヒーチェーンは積極的に店舗網を拡大している。

病院のほかにも最近目立つのが、官公庁舎内や高速道路のサービスエリア(SA)など、従来なかったスペースへの出店。スターバックスは7月末、東京・霞が関の中央官庁では初めて、経済産業省内に出店した。来月には東名高速のSAに初出店する。足柄SAを皮切りに、年度内に複数の店を開く計画という。

「タリーズ」も証券会社、銀行、大型電気店とのコラボレーション店舗に力を入れる。「ドトール」は3年前から旅行代理店の併設店を展開し、旅行申し込み客の取り込みを狙っている。



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