「高級感」を強く打ち出す
アサヒビール 「贅沢」を11月発売
9月6日(木) 東京朝刊
アサヒビールは5日、発泡酒の新製品「贅沢(ぜいたく)日和」を11月7日に全国発売すると発表した。発泡酒にコクや味わい深さを求める消費者の声に応え、「高級感」を強く打ち出したのが特徴。アサヒが上半期(1〜6月)、ライバルのキリンビールにシェアトップの座を奪われた要因の一つが発泡酒の低迷だっただけに今回の新製品は、反転攻勢の大きな鍵になりそうだ。
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アサヒビールが新発売する発泡酒「贅沢日和」。低迷する発泡酒販売の巻き返しを狙う=東京・丸の内の東京商工会議所 |
「顧客の発泡酒を選ぶポイントを1年前と比較すると、コクや味わいを求める割合が増えてきた」。アサヒビール・マーケティング本部の池田史郎担当副本部長は、新商品開発の背景をこう説明する。
通常の発泡酒よりも貯蔵期間を1・3倍長く設定するなど、高級感のあるプレミアムビールの製法を発泡酒に応用した。発泡酒の長期熟成は業界初という。だが、価格は通常の発泡酒と変わらず、「日常の中の身近な贅沢」をアピールし、新たな市場の開拓を狙っている。
発泡酒市場はビール風味のアルコール飲料「第3のビール」人気に押され低迷。今年1〜7月の業界全体の出荷数量(課税ベース)が24・2%減少したのに対し、アサヒは36・1%減と輪をかけて落ち込んでいる。一方、キリンの出荷数量はプラスで推移しており、アサヒとの差が顕著に表れている。
キリンが、発泡酒のシェアを大きく伸ばしたのは、今年2月、コクや味わい深さを強調した「味わい系」の発泡酒「円熟」を投入したことによる。7月には累計2億本(350ミリリットル缶換算)を突破し、年間の販売予定数量を上方修正した。サッポロビールも同じ味わい系の「雫(しずく)」を5月に投入し堅調に伸ばしている。「味わい系」は発泡酒市場の中で大きな位置を占めるようになった。
そもそもこの分野はアサヒが「本生ゴールド」で開拓した分野だが、発泡酒と同様に低迷していた第3のビール市場の立て直しに注力した影響で、先行メリットを失う結果となった。
アサヒは、今回の新製品について「コクや味わい深さ」を求める市場から、さらに高級感をアピールした「プレミアム発泡酒」と位置付け売り込みを図る作戦だ。
第3のビールでは「ぐびなま」「極旨」を相次いで投入しており、アサヒはビール以外の市場で、ようやく戦える武器をそろえた形になった。6年連続の首位を確保できるかどうか。年末の需要期に向けて、これから大きな正念場を迎えることになりそうだ。
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