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楽しみは千差万別 創業300周年
「紅茶」 トワイニング10代目当主に聞く 
  東京朝刊 by 榊聡美
世界的に有名な英国の紅茶ブランド、トワイニングが今年で創業300周年を迎えた。紅茶文化を花開かせ、家庭に浸透させるきっかけを作ったことで知られる同ブランドの10代目当主、スティーブン・トワイニング氏(43)が語る紅茶へのこだわりとその魅力とは−。

1日に最低9杯の紅茶を飲むスティーブン氏。「夏、自宅の庭で花を愛でながら家族と一緒に味わうのが一番好き」と話す

ブレンドに自信
「トワイニングにとって特別な節目に、これもまた特別な『10代目』として迎えられたことを大変誇りに思っています」と、スティーブン氏は晴れやかな表情で語る。

3世紀に渡る同ブランドの歴史は、国民に根付いた英国の紅茶文化のそれと重なる。スティーブン氏は「創業から一貫している理念は、とにかく質のよい紅茶にこだわり続けるという一点のみ」と言い切る。

同社では約100種類のブレンドティーを販売し、世界100カ国以上に輸出している。

トワイニング創業者のトーマス・トワイニング氏の肖像(提供写真)



「トワイニングは茶園そのものを所有していない。その時々で最も質がよく、必要としているものを自由に買い付けられる状況が、強みだと考えているからです」

農作物の一種であるお茶の出来は天候や環境の変化に左右される。1年を通じて品質、価格を一定に保つために、紅茶はブレンドしてから販売するのが一般的だ。

茶葉の買い付けとブレンダーとを分けず、同じスタッフが行っているのが、高水準を保つ秘訣(ひけつ)と明かす。

“伝道者”の使命
スティーブン氏が当主として感じている「使命」は、多くの人に紅茶の正しい知識を伝えること。その重要性はすでに幼いころから痛感していたという。

8歳のころ、地理の授業でインドがテーマになった。スティーブン氏は先生に頼まれ、同国の代表的な輸出品である紅茶について、クラスメートに講義をした。試飲用に6、7種類の紅茶を持参したところ、種類の多さ、それぞれに異なる味わいや香りを持つことに誰もが驚いたという。

「濃ければミルクを入れて飲む、その程度の認識しかなかったんです。とてもショックを受けたと同時に、僕が世界中の人に紅茶の正しい知識を広めていかなくてはいけない、という気持ちが芽生えた瞬間でした」

そのため、入社後は営業を振り出しに、自ら生産地に赴き、茶摘み作業、買い付けも経験した。それが今日、世界各国で行っている講演活動に役立っている。

ペット飲料で手軽に楽しんだり、初摘みのダージリンを心待ちにするファンも増えている日本の“紅茶事情”には、驚きと喜びを感じているという。

「紅茶には『こうしなくてはいけない』というルールが何ひとつない。いれ方や楽しみ方は飲む人の数だけあるのが魅力なのです」

階級、性別を不問にした創業者
1911年に撮影されたロンドンにあるトワイニングの直営店(中央)。入り口には英国王室御用達のマークが見える

トワイニングの歴史は1706年に創業者、トーマス・トワイニング氏がロンドンにコーヒーハウスを開いたことに始まる。それまで英国で紅茶は王侯貴族の嗜好(しこう)品だったが、コーヒーハウスが増え、ブームを呼ぶと人気は庶民にまで広まった。しかし、店は「紳士の社交場」で女人禁制だったという。11年後にトーマス氏は英国初の紅茶専門店を開き、階級や性別を問わず、紅茶を愛する人たちに門戸を開いた。

また、4代目のリチャード氏は、1773年に起きた「ボストン茶会事件」の要因である紅茶の高額な関税を引き下げるべく、英国議会に働きかけた。その後、国内消費量は急激に伸びた。



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