ソニーが26日発表した平成18年9月中間連結決算は、ノートパソコン用リチウムイオン電池の不具合問題に伴う512億円の回収費用や、「プレイステーション(PS)3」の値下げによる費用計上などゲーム部門の不振が響き、本業のもうけを示す営業利益は前年同期比90・9%減の62億円と大幅減益となった。前年同期に計上した厚生年金基金の代行返上益735億円の反動も響いた。
一方、売上高は液晶テレビやデジタルカメラなどが好調で9・7%増の3兆5984億円となった。最終利益も携帯電話を手掛けるソニー・エリクソンなど関連会社の好調で60・2%増の339億円となった。
大根田伸行最高財務責任者は、今中間期の減益要因について「一時的な費用を除けば、中期経営計画並み」と述べた。平成20年3月期の売上高営業利益率を5%に引き上げる目標については、「旗を降ろす段階にない」(同)と語った。
国内ゲーム機2社 前哨戦は任天堂の圧勝
国内でゲーム機を手掛けるソニーと任天堂の2社が26日、平成18年度中間期(4〜9月)連結決算を発表した。任天堂は売上高、利益とも過去最高を記録したが、ソニーの営業利益は91%減。ゲーム部門に限れば営業赤字に転落した。明暗を分けたのは携帯ゲーム機。「ニンテンドーDS」が1000万台を超えたのに対し、「プレイステーション・ポータブル(PSP)」は600万台を割った。年末商戦で家庭用の新型機を投入する両社だが、「前哨戦」は任天堂の圧勝となった。
「DSと(軽量型の)DS Lite(ライト)が非常に売れた。売り上げが100万本を超えるゲームソフトも9タイトル出た」。大阪で行われた決算会見で笑みをこぼした任天堂の森仁洋専務。DSの累計販売台数は全世界で2600万台を超えた。ゲーム機史上最速のペースだ。
強さの理由はやはりソフト。「Newスーパーマリオブラザーズ」の676万本を筆頭に、社会現象となった「脳を鍛える大人のDSトレーニング」などミリオンセラーが続出した。しかも、ソフト売上高に占める自社ソフト売上高の割合は、前年同期比10ポイント増の77%。一般的にゲーム市場は利益率の高いソフトがハード(ゲーム機本体)の赤字分を補う収益構造だ。しかし、DSでは「(ハードでも)量産効果で利益が出ている」(森専務)という。
一方のソニーはノートパソコン用リチウムイオン電池の不具合にからむ回収費用などがかさみ、18年7〜9月期の連結決算では営業赤字に転落した。「一時的な要因だ」と強調するソニーだが、19日にPSPの今期出荷を1200万台から900万台に下方修正したように、業績悪化の主要因のひとつにゲーム部門の不振がある。
ゲーム部門は受難が続いた。11月に発売する新型機「プレイステーション3(PS3)」の欧州発売延期とその後の値下げ・仕様変更だ。その結果、PS3関連で約300億円、PSPの苦戦で約300億円、合わせて600億円の利益押し下げ要因となった。
都内での決算会見で大根田伸行最高財務責任者(CFO)は「ゲームは現行機でビハインド(リードされた状態)」とDSへの苦戦を認める。今期のゲーム部門はPS3開発費用などでもともと1000億円の赤字を見込んでいたが、赤字幅は倍の2000億円にまで拡大するもよう。
ソニーにとって下期最大の課題は「PS3をちゃんと立ち上げること」(大根田CFO)。まずは年内出荷400万台という目標をクリアし、PS2で築いた家庭用ゲーム機の牙城(がじよう)死守を目指す。一方の任天堂は12月発売のWii(ウィー)で迎撃。「PS3を買うのは従来からのゲームファン。Wiiは年齢の高い層や女性層からも好反応」(森専務)とDSに続く“連勝”をもくろんでいる。